最近バターの効果が見直されつつありますが、現在「ギー(Ghee)」というバターに近い食べ物が海外で注目されているのをご存知でしょうか?日本でもようやく認知されつつありますが、まだまだ知らない人が多い食べ物です。
そのギーには多くの効果や効能が期待されていますが、自宅でも簡単に作ることが可能です。ギーのスゴさを知ると食べたくなること間違いありません。
ギー(Ghee)とは?その特徴について
ギーの原料は牛、水牛、ヤギのミルクです。ミルクを沸騰させて煮沸殺菌し、その後乳酸発酵させて発酵無塩バターである「マカーン」が作られます。
その「マカーン」をじっくり加熱して溶かしたものをろ過し、タンパク質・水分・不純物を取り除いた「溶かしバター」のことを「ギ(Ghee)」といいます。
簡単にいうと「ギーはバターを加熱してろ過したもの」で、ギーはアーユルヴェーダで万能オイルとして何千年もの間利用されてきました。
インドの他にもアフリカやアジアの一部の地域でも利用され、アーユルヴェーダにおいてギーは最も優れたオイル、「最高の油」とされており、その効能の理由が最近の研究で次々に解明されてきています。
近年では、「次なるココナッツオイル」とも言われ、アメリカではセレブの間で人気が高まっています。
ギーの特徴は
【①常温で長期間保存できる】
ギーは、不純物が無いこと、脂肪酸は飽和脂肪酸がメインであること、またビタミンEも豊富なことから酸化しにくい特徴があります。そのため、インドのような高温多湿の地域でも 「長期間保存や常温保存できるオイル」のひとつとされています。
また、適切な環境下で作られた良質なギーであれば永久保存も出来るとされ、なんとインドには100年も経つ年代物のギーが存在すると言われています。
【②乳糖不耐性の人も大丈夫】
ギーは、ラクトース、カゼイン、乳固形分等を含まないため、乳糖不耐症の人も利用できます。
乳製品が苦手という人もギーであればお腹を壊すことがないので安心して食べることができます。ではこの最高の油「ギー」にはどのような栄養成分が含まれているのでしょうか?
【関連記事】
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ギーに含まれる注目の栄養成分
ギーはバターが原料なので、タンパク質を除けば栄養成分もバターと一緒になります。
ただし主に「穀物を食べて育った牛」の乳から作ったバターと「牧草を食べて育った牛」の乳から作ったバターではバターの栄養も変化します。
トウモロコシなどの穀物を食べさせる理由は短期間で大きくなるために与えるのですが、その穀物はほとんど遺伝子組み換え作物です。また、外国産の穀物の飼料は農薬や化学肥料も使用している可能性がかなり高いです。
さらに外国産(欧州以外)の牛は成長ホルモン剤や過剰な抗生物質を投与されている可能性も高いです。一方「牧草だけを食ベた牛」ならば遺伝子組み換えや農薬、化学肥料、ホルモン剤や抗生物質の心配もありません。
広大な牧草地で育っているのでストレスも無く、そのような牛のお肉や乳はとてもおいしいです。
このように牧草だけを食べて育った牛から絞った乳で作ったバターを「グラスフェッドバター」と言います。このグラスフェッドバターから作ったギーは「最高級のギー」です。
というよりも遠い昔の時代は牧草だけで育った牛が普通でしたので「本物のギー」とも言えますね。今回はそのグラスフェッドバターから作ったギーの注目の栄養成分を紹介します。
グラスフェッドバターの詳細は
「グラスフェッドバターとは?その効果・効能と栄養成分や普通のバターとの違い、選び方について」をご覧ください。
①中鎖脂肪酸
グラスフェッドバターは飽和脂肪酸が多くを占めますが、以前はこの飽和脂肪酸の過剰摂取により体に悪影響を与えるということで、
- 「動物性の油のバター=悪い食べ物」
- 「植物性の油のサラダ油=健康に良い」
というイメージが定着しました。ですが現在はバターがサラダ油よりも健康に良いと再評価されています。
実際バターは飽和脂肪酸が多いのですが、その中で過剰摂取に注意しなくてはならないのは長鎖脂肪酸です。ですがギーの長鎖脂肪酸の割合はそれほど多くなく、中鎖脂肪酸が多く含まれています。
中鎖脂肪酸はココナッツオイルに豊富に含まれている「太らない油」ということで注目され、最近は中鎖脂肪酸が100%のMTCオイルも人気があります。
②短鎖脂肪酸の「酪酸(別名ブチル酸)」
酪酸も飽和脂肪酸ですが、中鎖脂肪酸ではなく短鎖脂肪酸の一種です。
国立循環器病研究センターの研究グループは、まだネズミの実験ではありますが「酪酸が脂肪の分解を促進する」と国際的なオンライン科学誌プロスワン誌に報告しています。
そして酪酸はネズミだけでなく人にも脂肪燃焼の効果があると言われていますが、この研究では効果があるのは「質の良いバターに限る」とも言っています。
つまり普通のバターではなく、質の良い「グラスフェッドバター」のことを指してします。ギーもグラスフェッドバターから作ることで酢酸を多く摂ることができます。
③不飽和脂肪酸の一種の「共役リノール酸」
リノール酸は不飽和脂肪酸のオメガ6系脂肪酸の一種ですが、共役リノール酸もリノール酸から作られます。ただし、リノール酸とは構造が異なるために「異性化リノール酸」とも呼ばれています。
共役リノール酸は脂肪をエネルギーに変えるために働く酵素を活性化させる働きがあります。そしてこの酵素は本来運動をすると活発になるもので、共役リノール酸は運動することと同じような脂肪燃焼効果を持っています。
この共役リノール酸もグラスフェッドで育った牛やミルクに多く含まれていることから、バターもやはりグラスフェッドバターの方が普通のバターよりも共役リノール酸が多く含まれています。
その他にもグラスフェッドバターは一般的なバターと比べてオメガ3脂肪酸が多く含まれており、さらに脂溶性ビタミンのビタミンAやビタミンE、βカロテン(一部ビタミンAに変換)なども豊富です。
ではギーを食べることでどのよな効果や効能が期待できるのでしょうか?
ギーの効果や効能について
①ダイエット効果(脂肪燃焼)
中鎖脂肪酸や酪酸、共益リノール酸にはそれぞれダイエット効果が期待されています。
「中鎖脂肪酸」には
- コレステロールがつきにくい
- エネルギー代謝を活発にする
- 肥満の原因である中性脂肪がつきにくい
- 蓄積している中性脂肪を減らす作用
といった特徴があります。
「酪酸」には「脂肪の分解を促進する」という研究報告があったと先程紹介しましたが、それだけではなく
- 非アルコール性脂肪肝
- 脂質異常症
- 肥満
といった治療に有効な薬の候補になるかもしれないと期待されている成分です。
「共役リノール酸」にも脂肪燃焼効果が期待されていますが、エネルギーに変える酵素の働きを活性化するので脂肪が燃えやすい体になり、代謝効率も上げることができます。
そして同時に筋肉を増加・増強させる効果もあり、共役リノール酸が含まれているサプリメントを飲みながら体を鍛えているボディビルダーやアスリートが増えています。
バターコーヒーダイエットにもギーを使用
数年前から「バターコーヒーダイエット」が流行っているのをご存知でしょうか?
流行ったきっかけはこちらの著書
シリコンバレー式自分を変える最強の食事 [ デイヴ・アスプリー ]
コーヒーに中鎖脂肪酸100%のMTCオイル、そしてグラスフェッドバターを入れて飲むのですが、この本の中ではグラスフェッドバターの代わりにギーを使用するのもおすすめしています。
ダイエット方法については「MTCオイルとは?その効果効能とダイエットのやり方や摂取量、食べ方について紹介します」をご覧ください。
コーヒーにはダイエット効果があると言われていますが、MTCオイルやギーといった2種類のオイルを使用してやせるというのは本当に驚きますね。
②美肌・美白効果
バターが原料のギーは油なので食べるとニキビが出やすくなると思うかもしれません。ですがギーには美肌・美白に効果がある抗酸化成分がたくさん含まれています。
その抗酸化成分がカロテンやビタミンA、ビタミンEです。
体内に存在する活性酸素はある一定以上に増えると、シミやしわ、そばかす、たるみといった肌の老化は加速しますが、それを抑制するのが抗酸化成分です。
特にビタミンAとEを合わせてとるとビタミンEがAの働きを活性化させ、相乗効果により抗酸化力が高まると言われています。またビタミンAは皮膚や目、口などの粘膜を健康に保つ作用もあるので美肌にも大きく影響します。
ギーの美肌効果は食べるだけではありません。直接肌に塗ると、皮膚の奥まで成分が届きやすい美肌効果のあるオイルです。どんな肌質の人でも使えるオイルで肌をやわらかく、そして丈夫にしてくれます。
③腸内環境を整え免疫力のアップ
共役リノール酸には免疫力のアップが期待されています。免疫力がアップすることで多くの病気の予防になります。もともと共役リノール酸は発ガンを抑制する物質の成分を分析している途中で発見された成分です。
そして酪酸には、以下のような「腸内環境を整える作用」があります。
- 腸内を弱酸性の環境にすることで悪玉菌の増殖を抑制する
- 大腸の粘膜を刺激して「ぜん動運動」を促進させ、便通を改善してくれます。
また、最近の研究によると、十分な酪酸(短鎖脂肪酸)の生成は、キラーT細胞の生成を促すことが分かってきました。キラーT細胞は、異物になる細胞(移植細胞、ウイルス感染細胞、癌細胞など)を認識して破壊することが知られています。
さらにカロテンやビタミンA、Eの抗酸化成分も細胞の老化を防いでくれます。ビタミンEやオメガ3脂肪酸は血液をサラサラにする効果があるので動脈効果や生活習慣病などの予防に効果が期待されています。
➃抗アレルギー作用
現代は、アレルギー社会といわれるほと、何かしらのアレルギーを持っている人が多いですね。花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、動物アレルギ―など、多くの人が悩まされています。
ギーに含まれる共役リノール酸には、
- アレルギー症状の原因となる物質の生成を抑える
- アレルギー反応そのものを抑える
といった作用があり、アレルギーの改善に期待ができます。またオメガ3脂肪酸も抗アレルギー作用が期待されている成分です。
⑤眼精疲労や視力の回復
ギーに豊富に含まれるβカロチンは体内で一部ビタミンAに変わります。このビタミンAは「目のビタミン」と呼ばれますが、これは目の網膜にある「ロドプシン」という物質の主成分であるためです。
「ロドプシン」を活性化させることで眼精疲労や視力の回復も期待できます。
実際にアーユルヴェーダのひとつにギーで目を洗うリフレッシュ法であるネトラバスティがあります。これは小麦粉などで作った土手で目の周りを囲み、そこにギーを流し入れるという方法です。(ただしこの方法は専門の人にやってもらうようにしましょう)
このネトラバスティは
- 眼精疲労の回復
- ドライアイの解消
- 目のアレルギー症状の緩和
といった目の不調に対する効果がある他、白目をクリアに見せる効果やクマや目元のくすみにまで効果が期待できます
⑥脳の活性化、アルツハイマー対策など
ギーに含まれている豊富な中鎖脂肪酸とオメガ3脂肪酸により『脳の活性化』が期待できます。特にオメガ3脂肪酸の「DHAやEPA」は、青魚やエゴマにも含まれている成分ですが、近年、脳の活性化に役立つことが分かってきました。
また、以前ココナッツオイルは「認知症の予防に効果がある」ということで注目されましたが、それは中鎖脂肪酸によるものです。ギーを食べることが脳の活性化につながり、認知症やアルツハイマーの予防につながると期待されています。
このように多くの効果や効能をもたらしてくれるギーですが、バターから簡単に作ることができます。
ギーの作り方
ギーを作る時は最高級のバターであるグラスフェッドバターを使用してください。材料はこれだけです。ギーを保存するビンは煮沸消毒をしておきましょう。
【作り方】
①ギーを鍋に入れて弱火で溶かします。この時バターを小さく切っておくと早く溶けます。
②シュワシュワと音が出始めて泡がこんどはパチパチと音が変わり、だんだん大きくなっていくその後じわじわと小さい泡が出るまで待ちます。この時かき混ぜずにそのままにしてください。
➂鍋を傾け、底に茶色い沈殿物があって、液体が黄金色で甘い香りが広がってきたら火からおろします。
アクのような浮遊物が出てきたら取り除きます。最後にこして沈殿物を取り除きますが、この時に
- 油こし紙を保存ビンにセットしてこす
- ボールにザルとキッチンペーパーを乗せてこす
- コーヒーフィルターでこす
などの方法がありますのがお好きなこし方で良いです。
私はこの時にザルとキッチンペーパーでやりました。
出来あがりは黄金色です。数時間経つと固まり、見た目はバターのような黄色になります。ギーを作るときのポイントはとにかく焦がさないことです。
弱火でも強いかもと感じたら鍋を持ち上げたりして調整するようにしてください。手作りが面倒だという場合は購入しましょう。
ギーの正しい選び方
ギーは一部の高級スーパー以外ではまだまだ取り扱いが少ないので、その場合はアマゾンなどのネット通販で購入するのがおすすめです。
ネット通販で探すと色々とギ―が出てきますが、購入の際は単に普通のバターをろ過したものではなく、グラスフェッドバターをろ過したギーがを選ぶようにしましょう。
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下記の記事ではギーの原料となるグラスフェッドバターとおすすめのギーも紹介しています。
「グラスフェッドバター・ギーのおすすめ品と正しい選び方!国産・ニュージーランド・フランス買うならどれ?」をご覧ください。
ギーの使い方や食べ方について
【①パンにトーストして】
パンにバターを塗るのと同様にギーを塗るのもおすすめです。意外とさっぱりしておいしいですよ。
【②コーヒーや紅茶にいれて】
バターコーヒーダイエットにギーを使用するのもおすすめですが、普通に飲むコーヒーや紅茶にミルク代わりにギーを入れるととてもクリーミーになります。
「飲み物に油を入れるの?」と思うかもしれませんが、カフェやファーストフードでミルクと言われる小さな白い容器に入っている白い液体(別名コーヒーフレッシュ)は一切に牛乳は含まれていないのをご存知ですか?
見た目はミルクですが、あればほぼ油でできていて体にもあまり良くありません。ですがギーであれば同じクリーミーな味わいで、しかも健康に良いのでぜひ試してみてください。
【③ホットミルクに入れて】
夜寝る前にホットミルクを飲むと、ぐっすり眠れると言われていますが、これにギーを入れて飲むと便秘解消にも良いと言われています。
便秘で悩んでいる人はぜひお試しください。
【➃白湯にまぜて】
白湯とギーには老廃物や毒素を外に出すデトックス効果がありますが、これを一緒に摂ることでさらに効果が高まります。ホットミルク同様に便秘にも良いですよ。
【⑤炒め物にサラダ油の代わりとして】
サラダ油は健康に良くない油の代表ですが、その代わりにギーを使ってお肉を焼いたり、炒め物に使うとヘルシーになります。揚げ物には合わないので炒め物専用に使いましょう。
【⑥肌に塗って】
アーユルヴェーダではギーをマッサージに使用しますが、カサカサしている部分に塗ることで潤いが戻ります。また、ギーは抗菌作用もあるので傷やニキビに薄くぬっても効果がありますし、疲れた時にはまぶたに薄くぬってみましょう。
ギーの摂取量とカロリーや注意点について
万能オイルのギーですが、健康なオイルもそうでないオイルもそれほどカロリーは変わりません(1g約9kcal)食べ過ぎはカロリーオーバーになってしまうので、多くても大さじ1杯(12g=108kcal)までにしましょう。
またアーユルヴェーダの古典書には「ハチミツを同量のギーと混ぜた場合、人に悪影響をもたらす」と書いてあると言われています。実際に化学的根拠があるわけではなく、実際に一緒に食べてもすぐに体調を崩すということはありませんが、気になる方は控えた方が良いでしょう。
まとめ
ギーはバターを加熱してろ過したものです。タンパク質や水、不純物などが取り除かれて最高の油になります。ただし購入したり、作る場合は良質のバターであるグラスフェッドバターを選んでください。
それにより最高級のギーになります。
動物性の油は、健康に良くないイメージが持たれがちですが、不純物などが取り除かれたギーには、うれしい効能が沢山あります。
まずは、日頃のお料理に使うサラダ油をギーに変えてみるなどして、取り入れてみてはいかがでしょうか。
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