日本の食卓にかかすことの出来ないお醤油。
何気なく使っているお醤油ですが、いくつかの種類にわけられるのをご存知ですか?
普段お料理に使っているお醤油の種類を変えるだけで、レシピの幅がぐんと広がりますよ。
いくつかある中で、ここでは、たまり醤油についてご紹介したいと思います。
たまり醤油とは
ルーツ
今から約800年前の鎌倉時代(1185年—1333年)が起源といわれています。
心地覚心という禅僧が、中国の径山寺(きんざんじ)で修業を積んだ後に、現在の和歌山県に西方寺(興国寺)を開山します。
そこで、精進料理として径山寺の味噌の製法を模した金山寺味噌を創案し広めていたそうです。
その頃の金山寺味噌は、大豆と大麦の麹に、下漬けしたウリやナス、キュウリなどの野菜を桶に入れて味噌を造っていました。
すると、塩の浸透圧によって水分が出てきます。
当初、この水分はカビの発生や腐敗の原因になるとして捨てるだけでした。
しかし、ある時その水分(味噌の上澄み)を使用して野菜を煮てみると、とても美味しく、旨味が出て煮物に最適であることを発見したのです。これが、溜(たまり)の始まりとなったのです。
江戸時代になり、江戸前寿司の発展とともに盛んに使われるようになったため、当時は醤油といえばこの「たまり醤油」が主流でした。
たまり醬油の特徴
たまり醤油は、とろみがあり、風味・色ともに濃厚で、ほんのり甘みがあり、独特の香りが特徴といえます。
このたまり醤油特有の濃い色合いや、とろっとした粘りけが出るまでには、相当な手間がかかっているため、値段も高価になります。
たまり醬油の製造方法
味噌の原料である大豆に麹を加えて1年間発酵させ、味噌玉というものを作ります。
ここからしみ出すもろみ液を汲み出し味噌玉にかけ、この作業を数年間にわたり何度も繰り返して熟成させ、やっとたまり醤油が完成します。
たまり醤油は、うま味成分が醤油の中でもトップクラスで、「大豆の旨味が凝縮した醤油」といえます。
産地
現在では、東海から中部地方にかけて製造されており、三重県、岐阜県、愛知県が主な産地となっています。
特に愛知県武豊町では、蔵元が軒を連ねる町並みを見ることができます。
たまり醤油と一般の醤油との違い
私達の暮らしと密接に関わってきた調味料である醤油は、各地で独自の風味や味わいを持ついろいろな種類が長い歴史の中で生み出されてきました。
日本農林規格(JAS)では、製造方法、原料、特徴などから5種類に分類されています。
- こいくち
- うすくち
- たまり
- さいしこみ
- しろ
一般的に広く使われているのは、濃口醤油とよばれるものになります。
この濃口醤油とたまり醤油では、原材料や製造方法に違いがあります。
濃口醤油
大豆と同量の小麦と塩、麹で作られています。
製造は「高塩稀態醸造」という方法で作ります。
大豆と小麦(粉)を混ぜたものに2〜2.5倍の塩水を加えて流動状にし、3〜6ヶ月熟成するというものです。
たまり醤油
大豆と塩、麹だけ、もしくは小麦が2割加わる程度で作られるため、大豆の味が濃くなるのです。
製造は、大豆100%の味噌から出る熟成したもろみ液を、圧搾したり、自然にためて取り出します。
この製法を天然醸造といい、3年近く熟成させることも多く、熟成期間が長い分、味も色も濃くなり、コクも深まります。
大豆に含まれるタンパク質は、分解され旨味の元となるため、たまり醤油は、旨味成分(アミノ酸)が非常に高くなるのです。
ただ、昔ながらの「伝統製法で造られるたまり醤油」は、大変手間がかかり、ほんの少ししかとれません。
そのため私たちが「普段使っているたまり醤油」は、添加物や調味料でよく似た味にして、安価に大量生産されたものがほとんどです。
手間暇かけて造られるたまり醤油は国内の生産量のわずか2%と言われています。
塩分や成分の違いについて
濃口醤油もたまり醤油も、塩分濃度は16〜17%とほぼ変わりません。
成分を見てみると、醤油の炭水化物が大さじ1あたり1.82gであるのに比べ、たまり醤油は2.86gとなっていることから、たまり醤油の方がややカロリーが高めになります。
濃口醤油の主なミネラル
ナトリウムとモリブデンです。
モリブデンは、肝臓や腎臓に多く存在し、多くの代謝に関わっています。
不足すると頻脈、頭痛、夜盲症といった症状が起こることがありますが、通常の食生活で不足することはありません。
たまり醤油の主なミネラル
ナトリウムとマグネシウムです。
マグネシウムは、骨を形成したり、筋肉の働きを助けたり、高血圧を防止してくれる効果があります。
長期にわたり不足してしまうと、骨粗しょう症、心疾患、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まる可能性があると言われています。
おすすめのたまり醤油
「海の精 国産有機 たまり醤油 」
こちらは「国産の有機大豆」と伝統海塩「海の精」で2~3年もの歳月をかけてつくったこだわりの“国産有機・たまり醤油“です。
原材料は有機国産大豆、塩(海の精)、純米焼酎のみなので、もちろんグルテンフリーのたまり醤油です。
本物のたまり醤油を食べたいという人におすすめの醤油です。
たまり醤油は他のもので代用できる
たまり醤油を少しだけ使いたい、買うのはもったいないなんてことありますよね。
いつもお使いの醤油にプラスして代用できちゃうんです!
保存も出来るので、ぜひ試してくださいね。
【材料】
- 醤油(普段使用しているものでOK)
- ザラメ
- みりん
【作り方】
- 上記の割合で混ぜます。
- 沸騰しないよう細火にかけます。
- ザラメが溶けたら完成です。
たまり醤油を使ってみよう
旨味成分がたっぷり含まれているたまり醤油は、基本的に濃口醤油と同じように使うことができます。
特に魚料理(煮魚や照焼き)、焼き鳥のタレ、佃煮など、コクを出したいという時や綺麗な照りを出したいお料理に向いています。
また、魚の生臭みを抑える効果もあるため、刺身に合う醤油としても知られており、特にしっかりとした味わいの赤身によく合います。
同じ大豆製品の納豆とも相性は抜群です。
まとめ
濃口醤油 | たまり醤油 | |
原材料 | 大豆と同量の小麦と塩、麹 | 大豆と塩、麹だけ、もしくは小麦が2割加わる程度 |
製造方法 | 高塩稀態醸造。 大豆と小麦(粉)を混ぜたものに2〜2.5倍の塩水を加えて流動状にし、熟成する。 | 大豆100%の味噌から出る熟成したもろみ液を、圧搾したり、自然にためて取り出す。 |
熟成期間 | 3〜6ヶ月 | 3年近く |
塩分濃度 | 16〜17%でほぼ変わりません。 | |
炭水化物 (大さじ1あたり) | 1.82g | 2.86g |
ミネラル | ナトリウム、モリブデン | ナトリウム、マグネシウム |
最近はパンやパスタなどの小麦が含まれている食品を避けてグルテン(小麦に含まれているタンパク質)フリーの食材を食べる人も多くなっています。
また小麦アレルギーの人も増えてきていますが、そのような人でも小麦が入っていないたまり醤油(一部小麦は入っている商品もあり)はおすすめです。
毎日のレシピにマンネリを感じている方は、ぜひこの機会にたまり醤油を取り入れてみてはいかがですか?
毎日使うお醤油を変えただけで、何倍にもお料理の幅が広がりますよ。