コーラなどの炭酸飲料やポカリスエットなどのスポーツドリンク、お菓子やドレッシングなど多くの商品に見かける果糖ブドウ糖液糖は砂糖の代わりに使用されます。
ではなぜ多くの商品では砂糖の代わりに使われるのかその理由をご存知ですか?今回は果糖ブドウ糖液糖とは何か?そして危険性について詳しくわかりやすく紹介します。
果糖ブドウ糖液糖とは?
果糖ブドウ糖液糖の正式名所は「高フルクトース・コーンシロップ(別名:異性化糖)」と言います。
- フルクトース=果糖
- コーン=トウモロコシ
という意味なので「トウモロコシから作った高果糖のシロップ」ということです。
ですが、実際はトウモロコシだけでなくジャガイモなどのでんぷんを分解して得られたブドウ糖とブドウ糖の一部を酵素によって果糖に異性化させた化学物質です。
※果糖ブドウ糖液糖は食品添加物ではありません。
ブドウ糖だけでも良いのに、なぜわざわざ一部を果糖に変えるのかというとブドウ糖だけでは砂糖よりも甘くないためです。
ブドウ糖は砂糖の7割程しか甘みがありません。に果糖は砂糖の1.3倍程の甘みがあります。
甘みが強い順: 「果糖>砂糖>ブドウ糖」となります。そのためブドウ糖の一部を果糖に変えて甘味料にします。これを異性化糖と呼びます。
異性化糖にはコーラやアクエリアスなどに含まれている「果糖ブドウ糖液糖」やヤクルトなどに含まれている「ブドウ果糖糖液糖」などがありますが、「果糖」と「ブドウ糖」の順番に意味があります。
異性化糖製品は日本農林規格 (JAS) で以下のように制定されている。
- ブドウ糖果糖液糖:果糖含有率(糖のうちの果糖の割合)が 50 % 未満のもの
- 果糖ブドウ糖液糖:果糖含有率が 50 % 以上 90 % 未満のもの
- 高果糖液糖:果糖含有率が 90 % 以上のもの
- 砂糖混合異性化液糖:上記の液糖に 10 % 以上の砂糖を加えたもの(その液糖がブドウ糖果糖液糖であれば、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖)。
つまり果糖が多いと「果糖ブドウ糖液糖」で果糖が少ないと「ブドウ果糖糖液糖」となります。ブドウ糖よりも果糖の方が甘いので、甘さは「果糖ブドウ糖液糖」の方が強いです。
砂糖ではなく果糖ブドウ糖液糖を使う理由
では砂糖をそのまま使用するよりも、わざわざでんぷんを加工した「果糖ブドウ糖液糖」などを使用するのかというと、それは「砂糖よりも価格が安く手に入る」からです。
また果糖の甘みが強いため、「砂糖よりも使用量が少なくて済む」というメリットもあります。さらに、果糖の特徴として「低温だと砂糖よりも甘く感じるという性質があり、そのため清涼飲料水などで使われやすい」という理由もあります。
つまり、「安くて甘みが強く、低温だとさらに甘く感じるため使用量が少なくて済む」という理由で「果糖ブドウ糖液糖」などが使用されているわけです。
現在は砂糖の危険性について議論されていますが、その砂糖よりも「果糖ブドウ糖液糖」や「ブドウ果糖糖液糖」の方が危険なのでしょうか?
果糖ブドウ糖液糖の危険性!
ブドウ糖と果糖の特徴
同じ糖類のブドウ糖と果糖ですが、ヒトの体内での働きが違います。
ブドウ糖は腸で吸収された後に血液に入り全身の細胞に運ばれて、この時に血糖値が上がりますが、インスリンの作用によって細胞内に取り込まれます。その時に余った分は中性脂肪となって蓄えられます。
一方、果糖はほとんどが肝臓で代謝されるので血糖値は上がりません。ですが、ブドウ糖よりも吸収が早く、肝臓ですぐに中性脂肪などに変換され、余分なものが脂肪として蓄積されます。
血糖値の上昇に関してはブドウ糖よりも果糖の方が心配はありませんが、中性脂肪として蓄えられやすいのが果糖です。
血糖値が急上昇するのは?糖尿病にかかりやすいのは?
果糖は血糖値を上昇させないので、果糖ブドウ糖液糖よりも砂糖の方が血糖値を早く上昇させるように思うかもしれません。ですが、実は砂糖(ショ糖)は果糖とブドウ糖からできています。
となると血糖値の上昇スピードはどちらも同じくらいと思うかもしれませんが、これも違います。
「砂糖は体内でブドウ糖と果糖の2つに分かれてから吸収される」ので体に取り込んで吸収されるまでに時間がかかります。
一方、「果糖ブドウ糖液糖は最初からブドウ糖と果糖に分かれている」ので、あっという間に吸収されて血糖値がハネ上がってしまいます。
さらに果糖ブドウ糖液糖は血糖値の急上昇だけでなく、中性脂肪も砂糖よりも早く蓄えられるので糖尿病のリスクがより高くなります。
実際にハーバード大学公衆衛生学部のフランク フー教授によると
「果糖ブドウ糖液糖などの糖類が含まれるコーラなどの清涼飲料を1日1回以上摂取すると、体重増加や肥満につながりやすいことが、多くの研究で確かめられています。高カロリーの清涼飲料は、それ自体が満腹感をもたらすことはなく、食事のカロリー摂取量が減ることはありません。結果として体重増加を引き起こしやすいのです」
さらに
高カロリーの清涼飲料を1日に1~2回摂取した人では、摂取しなかった人に比べ、次のような変化が起こることが明らかになった。
・ 2型糖尿病の発症リスクが26%増加する
・ 心血管疾患の発症リスクが35%増加する
・ 脳卒中の発症リスクが16%増加する12万人の成人男女を20年間追跡して調査した研究では、高カロリーの清涼飲料を1日に350mL飲み続けると、4年間で体重が約2kgずつ増加することが判明した。
と発表しています。
参照:糖尿病ネットワーク「清涼飲料やお菓子の「果糖」が糖尿病や心臓病のリスクを高める」
コーラに関しては、過剰摂取すると体に良くないと知りながら飲んでいる人も多いでしょう。ですが、ポカリスエットやアクエリアスなどの清涼飲料水は果糖ブドウ糖液糖がコーラと同じくらい入っているにもかかわらず、あまり体に悪いとは思わないのではないでしょうか?
特に夏の熱中症対策として、果糖ブドウ糖液糖の清涼飲料水を飲み過ぎると糖分の過多だけでなく、空腹時にこのような糖度の高いものを飲んだら血糖値が一瞬にして上がってしまい糖尿病の原因になってしまいます。
※熱中症対策には経口補水液がおすすめです
WHO(世界保健機関)が「成人の1日あたりの砂糖摂取量は25g程度までが望ましい」とする新指針を発表しています。ですが、500mlの飲料の中には果糖ブドウ糖液糖はおよそ50ml以上は含まれています。
これは砂糖50g相当のカロリー、つまり200キロカロリーが入っています。1本飲んだだけでアウトです。そして350mlのコーラの缶でも25gを超えてしまいます。
このように果糖ブドウ糖液糖の問題は血糖値を上昇して中性脂肪がたまりやすくなるだけでなく、実際それらを過剰摂取している人がたくさんいるということです。
昔に比べて医療が発達しているのに、糖尿病患者が減らないのは糖分(だけでなく脂質も)を過剰摂取しているからです。甘い炭酸飲料や清涼飲料が大好きな人は毎日飲んでしまいがちですが、できれば毎日は避けてほしいところです。
また、果糖ブドウ糖液糖はドレッシングや焼き肉のたれ、お鍋のスープの素、納豆のタレ、みりん風調味料、ヨーグルトなど飲料水以外にも含まれているので知らないうちに摂取している可能性があるため注意が必要です。
果糖ブドウ糖液糖の原料は遺伝子組み換え作物?
果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖の原料はトウモロコシなどを使用しますが、この原料の多くが遺伝子組み換え作物を使用しています。国産のトウモロコシでは量が足りないですし、価格が高いので必然的に外国産を利用しますが、安く手に入る遺伝子組み換え作物を利用しているのが現状です。
遺伝子組み換え作物に関しては賛否両論あり、危険か安全かというのはここでは割愛します。ですが表示義務があるということは国も遺伝子組み換え作物は安全であるという見解ではあるものの、危険性がないと完全に否定できないからです。
トウモロコシは遺伝子組み換えの表示義務がある作物ですが、そこから加工して原形をとどめていないため飲料には表示義務はありません。
このように果糖ブドウ糖液糖にはいくつか危険性が指摘されています。「ならば、カロリーゼロの人工甘味料なら安心だね。」というとそうではありません。
詳しくは「人工甘味料スクラロースが危険なのはウソ、本当?血糖値や特保のコーラの安全性について 」を参照にしてほしいのですが、人工甘味料もさまざまな危険性が指摘されているので注意が必要です。
まとめ
- 果糖ブドウ糖液糖は血糖値の急上昇と中性脂肪がたまりやすい傾向にある
- 350mlのコーラを飲むとWHOが推奨している一日の砂糖の摂取量に達する
- 原料は遺伝子組み換えの可能性が高い
- 清涼飲料水にもたくさんの量が含まれているので、暑い時期の飲み過ぎには注意
- 飲料水だけでなく多くの加工食品に使用されているので注意が必要
果糖ブドウ糖液糖入りの高カロリーの清涼飲料は、それ自体が満腹感をもたらすことはないため過剰摂取しがちです。
コーラの場合、350mlの缶タイプだと一気に全部飲まなくてはなりませんが、ペットボトルであれば少しずつ飲むことも可能です。(炭酸がだんだん無くなりますが)
小さなお子さんや健康診断で数値が悪かった人は特に気をつけましょう。