ハムやソーセージ、たらこ、明太子などのパッケージを見るとほとんどの商品に使用されているのが「亜硝酸ナトリウム(Na)」です。この食品添加物は発がん性の危険があると言われていますが、ではなぜ使用するのでしょうか?
今回は亜硝酸ナトリウムの
- 使用目的
- 使用基準
- 発がん性あるって本当?
- 野菜にも含まれている?
- 取り除く方法
などを詳しく紹介します。
これを読んでから亜硝酸ナトリウム入りの商品を食べることをおすすめします。
亜硝酸ナトリウムとは?危険と言われる理由
食品添加物の亜硝酸ナトリウム(Na)はハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉やたらこ、いくら、明太子などの海産物にも含まれています。その他にもプロセスチーズや清酒などにも使用されています。
亜硝酸Naは毒性が強く、これまでの中毒例を見ると人間の推定致死量は0.18~2.5g(180㎎~2500㎎)と言われています。さらに亜硝酸Naにはもう一つの危険性が指摘されています。
食肉や魚に含まれるアミンという物質と結びついてニトロソアミン類という発がん性物質に変化します。このような理由から「亜硝酸ナトリウムを使用するのは危険だ!」と訴えている人や書籍を見かけることがあります。
ではなぜそれほど危険性が高いと言われている亜硝酸Naを加工食品に使用するのでしょうか?
亜硝酸ナトリウムの使用目的
①発色剤やニオイ消しとして
ハムやたらこなどの加工食品は時間が経つとともに色が変化して黒ずみます。黒ずむと味は変わらなくても、おいしく見えないので売れにくくなってしまいます。それを解決するのが発色剤の亜硝酸Naです。
そのおかげで使用しない場合と比べて長い間変色しなくてすみます。また、原料肉のもつ獣臭さを消し、ハムなどの加工肉の特有の風味を与えることができます。
実際に亜硝酸Naを使用していないハムやソーセージなどの加工肉もありますが、このような商品の中には原料肉そのもののニオイを感じることがあります。
②長期保存のため
亜硝酸Naは変色を防ぐだけでなく保存期間を長持ちさせてくれます。ハムやたらこは傷みやすい食べ物なので、使用することで長く販売することができます。
ワインにも亜硝酸Naが使用することありますが、この場合は発色剤としてではなく、酸化防止剤として使用しています。
③ボツリヌス菌の発生を抑える
ボツリヌス菌はたった1gで一都市分の人が死に至るぐらいの猛毒な菌です。ハムやソーセージなど加工品を製造する際に外気などからボツリヌス菌が入り込む可能性があります。
ですが亜硝酸Naを使用することにより「ボツリヌス菌による中毒を可能な限りゼロ」にします。
実際にボツリヌス中毒が起こる確率は何万分の一とかなり低いのですが、1日何千、何万個と出荷するメーカー側は何万分の一の可能性も避けなくてはいけません。
つまり「ボツリヌス菌の危険性」>「亜硝酸Naの危険性」というわけです。
また危険性が高いと言われる亜硝酸Naですが、厚生労働省が使用基準を設けていて、それ未満の使用量であれば安全であると認めているので使用できるわけです。
そのため、安いハムやソーセージ、たらこなどだけでなく、比較的価格の高い商品にもほとんど使用されています。
亜硝酸ナトリウムの摂取・使用基準!ADIとは?
亜硝酸Naの人間の推定致死量は180㎎~2500㎎と紹介しましたが、ADI(1日摂取許容量)は「0.06㎎以下×体重(㎏)/日」です。
※ADIとは生涯毎日摂取しても大丈夫な量のこと
体重が50kgの大人であれば3mg、10kgの子どもであれば0.6㎎が1日の摂取許容量になります。また、ハムやソーセージなどの加工食品には1kgあたり最大70㎎の亜硝酸Naを使用してよいことになっています。
100gのハムであれば亜硝酸Naは7㎎が最大の使用量です。
もし最大限に亜硝酸Naを使用していたハムを食べたとすると
- 50㎏の大人は50g
- 10㎏の子どもは10g
この量を食べただけでADIの基準に達してしまいます。数字だけ見ると、かなり心配をするかもしれません。
ですが、実はADIは2,3日の間10~100倍に当たる数値の亜硝酸Naを摂取しても影響が出るとは考えられないレベルの安全値です。
しかも一生涯に渡って毎日継続して摂取しても安全ということなので、毎日加工肉を食べるということはかなり低いですし、そもそも亜硝酸Naを最大の許容量まで使用している場合は少ないです。
大人であればソーセージ、ハムがとても大好きで毎日大量に食べるという人でなければ亜硝酸Naの危険性はありません。それよりも、ハムなど亜硝酸ナトリウムを使用した食品の過剰摂取は脂質やカロリーの摂りすぎのほうが心配です。
食品についた亜硝酸ナトリウムを取り除く方法
いくらある程度は安全だとわかっていても、やはり危険性のある亜硝酸ナトリウムが含まれている加工食品は食べたくないという人も多いでしょう。ADI値内の摂取だとしても、個人差もあるので全ての人に安全とは限りません。
そのような場合は亜硝酸Naを取り除きましょう。方法は簡単です。軽く沸騰させたお湯で薄切りのハムやベーコンは15秒ほど振り洗いをしましょう。
ソーセージや厚切りのハムやベーコンは切れ目を入2,3か所入れて、軽く沸騰させたお湯の中で1分ほどゆでてください。たらこやいくらなどの海産物は40℃くらいのぬるいお湯に1~2分程度浸けておくだけで取り除くことができます。
保存料などの添加物も一緒に取り除かれて傷みやすくなるので、できるだけ早めに食べきるようにしてください。
野菜にも亜硝酸ナトリウムが含まれている?
肉や海産物の加工食品だけに亜硝酸Naが含まれていると思っていませんか?実は野菜にも含まれています。
正確には亜硝酸ナトリウム(塩)ではなく硝酸塩なのですが、肉や魚に含まれているアミンという物質と摂ると亜硝酸塩(=亜硝酸Na)に変化します。
また魚や肉を食べなくても口内の細菌によって亜硝酸塩になることがわかっているので、「私は亜硝酸塩は食べていない」と思っている人でも実は食べている可能性が高いです。
野菜にふくまれている亜硝酸塩の量
単位はmg/kg
- ホウレンソウ:3560mg(+-552 )
- キャベツ: 435mg(+-215)
- キュウリ: 384mg(+-0.8)
- ハクサイ:1040mg(+-289)
- ナス: 387mg(+- 47)
- ゴボウ:2350mg(+-438)
このように結構な量が含まれています。では加工食品に含まれているのと同じで野菜の亜硝酸塩の摂取基準はあるのでしょうか?
内閣府の食品安全委員会によると
「硝酸塩の摂取量は主に野菜に寄与している。
しかしながら、野菜を摂取することの利点はよく知られており、硝酸塩の生物学的利用能※において野菜がどのような作用をもっているかは明らかではなく、野菜から摂取する硝酸塩の量を一日摂取許容量と直接比較することや、野菜中の硝酸塩量を限定することは適切でない」と評価されています。
食品由来の亜硝酸イオンによって、ヒトの健康に悪影響を及ぼしているという科学的知見がないことから、添加物として使用される亜硝酸ナトリウムが人の健康に悪影響を与えているという知見は得られていません。
と定めています。
参照:食品安全委員会「亜硝酸ナトリウム(発色剤)について」
つまり野菜に関しては硝酸塩の危険性は低く、食べることで良い効果を得ることができるため摂取基準は設けていません。
野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維などが含まれていて、必須の栄養素を摂取することができるので、硝酸塩が含まれているからといって食べるのを避ける必要がないという見解です。
それでも気になるようでしたら、加工食品と同じようにゆでるだけで硝酸塩がある程度落ちます。(ただし、加熱や水に弱いビタミンB群などは摂取しづらくなります)
参照:農林水産省「調理と硝酸イオン」
ただし、どんなに身体に良い食べ物とはいえ、人間に食べられるために食べ物は生まれてきたわけではないのですから、全く危険性がない食べ物というのはほとんどありません。
やはり偏った食事ではなく、バランス良く栄養を摂るようにしましょう。
まとめ
亜硝酸ナトリウムは毒性が強く、発がん性の危険も指摘されていますが、使用量や摂取量が定めされているのでそれほど心配はありません。
また、
- 色の黒ずみを抑えニオイ消を消す
- 保存が長持ちする
- ボツリヌス菌の発生を抑える
といった使用目的があります。
亜硝酸Naよりもはるかに危険性が高いボツリヌス菌はハムやソーセージなどを加工する際に発生する可能性があるので、多くの加工肉で使用されています。
実際に高級なハムやソーセージにもほとんどの商品で使われていて、使用していないのはほんの一部です。
これらを考慮すると、「亜硝酸ナトリウムは危険だから食べるな!」という主張をよく見かけますが、メーカー側からすれば安全性や長持ちするという理由で使用するのは仕方ないと思われます。
もちろん使用量や摂取量が定められている亜硝酸ナトリウムは危険性がないとは言えないですが、ハムやソーセージなどを過剰摂取した場合は添加物の危険よりも脂質やカロリー過剰の方が心配です。
ただ、どうしても嫌だという場合は
- お湯に浸して取り除く
- 亜硝酸Na不使用のハムや明太子などを食べる
といった方法で避けるようにしてください。
また、硝酸塩は加工食品よりも実際には野菜に含まれている量の方が多いです。
野菜の硝酸塩のADIは定められていなく危険性については、まだハッキリとしていない部分もありますが、同じ成分で加工肉は摂取量が決まっていて野菜は何も決まりがないというのはおかしいと思うかもしれません。
ただし同じような成分でも人口に作られるのと自然に含まれているものでは危険度が違う可能性があります。野菜の硝酸塩は危険度が低い可能性が高いものの、やはり同じ野菜ばかり食べるなど偏った食事だけは避けバランスよく食べましょう。