「味の素などのうま味調味料(化学調味料)は料理に欠かせない!」と多くの人が思っています。
ですが、
「うま味調味料は危険だから食べないほうが良い」という人がいる一方、
「うま味調味料は多くの実験で安全性が認められているから大丈夫」と意見が分かれています。
いったい、どちらが正しいのでしょうか?
今回は
- 化学調味料・うま味調味料とは?
- うま味調味料は危険と言われる理由
- うま味調味料は安全と言われる理由
- うま調味料の原料グルタミン酸ナトリウムとは?
- 味の素などの調味料の原料は?
など化学調味料について詳しく調べてみました。
味の素など普段から使用している調味料を何も知らずに食べるよりも、しっかりと理解して食べるのか食べないか判断してください。
味の素などの化学調味料やうま味調味料とは?
以前は味の素のような調味料を「化学調味料」と言われてきましたが、最近では「うま味調味料」と言われているのが一般的です。
(化学調味料だと体に悪いイメージなので、変わったようです)
うま味調味料で有名な商品は「味の素」や「ハイミー」ですが、これが加工食品やお弁当などに食品添加物として含まれると、「調味料(アミノ酸等)」と表示されます。
お菓子やインスタントラーメン、加工肉、みそ汁(インスタント)、カレールウなど本当に多くの加工食品の裏の原材料名を見ると書かれているので、一度チェックしてみてください。
この「アミノ酸等」の「アミノ酸」はグルタミン酸ナトリウムことを指しています。
そして「等」というのはイノシン酸とグアニル酸のことで、
- イノシン酸はかつお節などに含まれるうま味成分
- グアニル酸は干しシイタケなどに含まれるうま味成分
ただ、メインはグルタミン酸ナトリウムで味の素も97.5%はグルタミン酸ナトリウム(MSG)からできています。
グルタミン酸ナトリウム(MSG)とは?
グルタミン酸ナトリウムの「グルタミン酸」はうま味成分として知られていてタンパク質の元となるアミノ酸の一種です。
1866年にドイツの化学者のリットハウゼンによって発見され、1908年に東京帝国大学の池田菊苗教授によって「グルタミン酸がうま味物質である」ことが証明されました。
それまでは味覚は
- 甘味
- 塩味
- 酸味
- 苦味
この4つが基本要素と考えられていましたが、これに「うま味」が加えられることになりました。
この研究から生まれたのが「味の素」です。
グルタミン酸に水酸化ナトリウムを加えて中和させて、味の素の主成分となるグルタミン酸ナトリウム(MSG)を作ります。
グルタミン酸はうま味成分としてだけでなく、脳を活性化する効果があると言われていて認知症予防や記憶力のアップなどが期待されている成分です。
昆布などの海産物に多く含まれていますが、肉類や野菜、果物、キノコ類など多くの食べ物に含まれている安全な成分です。
では、なぜグルタミン酸からグルタミン酸ナトリウムになり、調味料として使用すると危険だと一部の人に指摘されるのでしょうか?
グルタミン酸ナトリウム(MSG)は危険?それとも安全?
グルタミン酸ナトリウムの危険性や安全性の意見が分かれるのは、それぞれ理由があります。
グルタミン酸ナトリウムの摂取は危険と言われる理由
グルタミン酸ナトリウムの被害で有名なのは、かなり前のことですが、1968年に起きた中華料理症候群と呼ばれる事件です。
これは中華料理を食べた後に
- 頭痛
- 顔面紅潮
- 体のしびれ
などの症状を訴える人が続出しました。
そして翌1969年にはマウス及びラットによる実験で幼体への視床下部などへの悪影響が指摘されると、1974年にはJECFAは1日の摂取許容量(ADI)を120㎎/㎏以下と定めました。
※JECFAとは国際連合食料農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同食品添加物専門家会議のこと
2002年には緑内障の研究で知られている弘前大学医学部の研究グループが「高濃度のグルタミン酸ナトリウムが緑内障の原因になる可能性がある」という報告を発表しています。
さらに2006年には米国国立医学図書館と米国国立衛生研究所が運営する健康情報サイト「The Medlineplus Medical Encyclopedia」では、「グルタミン酸ナトリウムは偏頭痛を起こす物質(グルタミン酸ナトリウムを含む食品)」と指摘しています。
こちらはグルタミン酸ナトリウムの危険性についての動画です。
海外のテレビ番組の動画の一部ですが、日本語の字幕スーパーが出ています。
とても怖い内容が話されていて、「味の素」も登場します。
日本では「グルタミン酸ナトリウムが危険か安全か?」という議論はテレビ番組では扱いません。
味の素が安全という結論で終われば良いのですが、危険という議論になった時に、大手のスポンサーの不利になるようなこと番組では言えないのです。
グルタミン酸ナトリウムの摂取は安全と言われる理由
1974年にJECFAでグルタミン酸ナトリウムの摂取許容量が定められましたが、その後繰り返し追試を行った結果、通常の摂取では人に対する毒性は確認できず、
そしてJECFAの1987年第31回会議では、グルタミン酸ナトリウムの1日許容摂取量を「なし」と結論づけています。
またグルタミン酸ナトリウムが安全であるという意見で多いのが「体に必須な塩分も過剰摂取すると死に至る場合があるように、グルタミン酸ナトリウムも過剰摂取しなければ問題ない」という主張です。
実際にグルタミン酸ナトリウムと「中華料理店症候群」との相関関係を疑問視する研究結果も出ていますし、過剰摂取に副作用があるのかないのかについては、科学的な結論はまだ出ていません。
このような理由で「グルタミン酸ナトリウムは安全」と主張している人は多いです。
2017年に欧州でグルタミン酸ナトリウムの許容摂取量を発表!
- 1974年にJECFAは1日の摂取許容量(ADI)を120㎎/㎏以下
- 1987年のJECFAの第31回会議では、1日の許容摂取量を「なし」
と発表して以降は最近まで何も変更はありませんでした。
ですが食品の安全についてかなり厳しい審査危険である欧州食品安全機関(EFSA)は2017年にグルタミン酸ナトリウムの1日における許容摂取量(ADI)を30mg/kgと定めています。
EFSAの「食品添加物及び食品に添加される栄養源に関する科学パネル」(ANSパネル)は神経発達毒性試験から得たグルタミン酸モノナトリウムのNOAEL(無毒性量)の3,200mg/kg体重/日を根拠として、デフォルトの不確実係数100を適用し、グルタミン酸及びグルタミン酸塩類(E 620~625)のグループ許容一日摂取量(ADI)を30mg/kg体重/日(グルタミン酸に換算したもの)と算定した。
参考サイト:食品安全委員会(内閣府)
30mg/kgということは1974年の120㎎/㎏の4分の1と厳しくなりました。
- 10㎏の子どもで300㎎
- 60㎏の大人で1800㎎=1.8g
となります。
結構少ない量の気がしますね。
グルタミン酸には無毒性量というのもがあり「3,200mg/kg体重/日」という数値なのですが、これは実験動物に対するものです。
ヒトに適用するためには無毒性量に通常100倍の安全係数を用いて算出します。
これは、実験動物とヒトの間で感受性の違いによる安全性を10倍、ヒトの性別、年令、健康状態などの違いによる安全性を10倍と見込み、かけ合わせて100倍としたものがADI値(許容一日摂取量)となります。
許容一日摂取量(ADI)も毎日ではなく、たまに数値が超えたくらいでは「体への影響はない」と言われています。
日本人の化学調味料の一日の平均摂取量は約2.5gです。
そして加工食品を多く食べる人や外食が多い人は6gを超えるとも言われています。
となると欧州食品安全機関(EFSA)が定めた数量60㎏の大人で1.8gを超えた数量になります。
また、人によっては少量で舌がしびれるなどの反応が起きる場合もあるので、グルタミン酸ナトリウムに敏感な人は注意が必要です。
グルタミン酸ナトリウムの問題点
欧州食品安全機関(EFSA)がようやく2017年になってADI値を発表しましたが、塩と違って問題なのが
グルタミン酸ナトリウムの問題点は味がしないことです。
塩の場合は入れすぎると「しょっぱい!」と感じますが、グルタミン酸ナトリウムは大量に入れても味がしないので、知らないうちに大量に摂取している場合があります。
多くの加工食品でも「調味料(アミノ酸等)」という名前でグルタミン酸ナトリウムが含まれていますが、それぞれの商品の含有量はそれほどでもありません。
特に注意したいのはラーメン屋や中華料理店で大量に使用しているグルタミン酸ナトリウムです。
私の知り合いでもラーメン屋で働いている人や過去に働いている人に聞くと、やはりほとんどのお店でかなりの量を使用していると言っていました。
日本人は味の素に慣れているので、入れないと物足りなく感じる人も多いようです。
また一部では味覚が破壊されるとも言われています。(味覚破壊についてはまだハッキリと結論は出ていません)
実際に欧米では「NO MSG(グルタミン酸ナトリウム不使用)」を宣伝文句にした調味料や中華料理店などが現在でも数多くあります。
このように国際機関では摂取量の制限がないグルタミン酸ナトリウムですが、毎日外食する人はできるだけラーメンや中華料理ばかり食べるのは避けたほうが良いです。
塩であれば量がわからなくても、ラーメンとか中華料理とかしょっぱいものを食べ過ぎているから摂りすぎかもと思うかもしれませんが、無味無臭のグルタミン酸ナトリウムは大量に摂ったとしても自覚がありません。
もちろんグルタミン酸ナトリウムの害だけでなく、塩分の摂りすぎや脂質、カロリーオーバーなどにも注意しましょう。
味の素の製造方法!原料は何を使用しているの?
グルタミン酸が豊富に含まれている食べ物は昆布やワカメなどの海藻類や野菜ではトマトに多く含まれています。
では味の素は何を原料にしているのかというと、
天然のサトウキビ、またはトウモロコシ、キャッサバ(芋)です。
これを初めて知ったときは「どの原材料もグルタミン酸はあまり含まれていない食べ物では?」と思いました。
ではどうやってグルタミン酸ナトリウムを生成するのか味の素のホームページで確認すると
製造方法は
- さとうきびなどをしぼって糖蜜をつくる
- 糖蜜を発酵させる(発酵菌が糖蜜中の糖分をグルタミン酸につくりかえる)
- 使いやすいようにグルタミン酸ナトリウムの粉状にする
とホームページでも説明しています。
これを読むと「天然のサトウキビを発酵させてグルタミン酸をつくり、最終的に使いやすいようにするために塩のような粉状にしているんだ~。これなら安心!」と勘違いするかもしれません。
ただこれは随分と省略しています。
糖分をとったあとの廃糖蜜を、グルタミン酸を生成するグルタミン酸菌という菌にえさとして与えます。
そしてこのグルタミン酸が含まれている廃糖蜜には不純物などが含まれていて簡単にグルタミン酸ナトリウムだけを抽出することは難しいです。
そのため塩酸や界面活性剤といった化学薬品を使用する必要があるため、メーカーやその業界では「うま味調味料」と呼んでほしいものの、「化学調味料」と言っても問題ありません。
それは化学処理なしでは作ることができないからです。
砂糖は元々色んな不純物の混じったサトウキビを絞った汁から作られています。それを最終的に純度の高い砂糖にするには、化学処理が欠かせません。
では「味の素は化学処理をしているから危険なので、食べないほうが良いのか?」という疑問がわきますが、そうとも言えません。
一般的に砂糖や塩は化学処理をして製造しているものがほとんどです。
自然の方法で抽出するには手間がかかるので当然価格も高くなりますが、大量生産する調味料はほとんど化学処理をしています。
となると味の素だけ悪者にするというのは違うと思います。
化学処理をしているのが危険となると砂糖や塩も危険となるので、この点だけで味の素を危険とは言えません。
あと心配な点は原料が天然のサトウキビ以外にもトウモロコシなどを使用しているとホームページでも紹介していますが、どれくらいの割合なのでしょうか?
天然のサトウキビとホームページで紹介して、トウモロコシはおまけ程度に記載されていますが、
「実際はトウモロコシなどの原料の方が安いので天然のサトウキビよりも大量に使用しているのでは?」と思ってしまいます。
トウモロコシが原料の大部分だとすると、間違いなくほぼ100%遺伝子組み換えのトウモロコシです。
遺伝子組み換えが危険か安全かは、ここでは省きますが、遺伝子組み換え食品はできるだけ控えたいという人は味の素はおすすめできません。
まとめ
グルタミン酸ナトリウムが安全か危険かというのは長年議論されています。
当初は摂取量に制限を設けていましたが、20年ほど前に制限を撤廃しました。
このように現在はグルタミン酸ナトリウムは一般的には危険とは言えません。
ただその後の研究では緑内障の原因となるなど過剰摂取は危険と発表していたり、現在も欧米では「NO MSG(グルタミン酸ナトリウム不使用)」を宣伝文句にした調味料や中華料理店などが現在でも数多くあります。
さらに欧州食品安全機関(EFSA)は「グルタミン酸ナトリウムの1日における許容摂取量(ADI)を30mg/kgを目安にする」と2017年に発表しています。
これは体重が60㎏の人で1.8gになりますが、日本人の化学調味料の一日の平均摂取量は約2.5gです。
ラーメンや加工品などを多く食べる人は6gほど摂取していると言われています。
となると日本人はグルタミン酸ナトリウムを過剰に摂取しているのです。
世界的な国際機関は安全としていますが、欧州食品安全機関(EFSA)という信頼のおける機関が摂取量を公表しているとなると、やはり過剰摂取には気を付けたほうが良いでしょう。
グルタミン酸ナトリウムは味覚が壊されるという懸念もあるため(実際のところはまだハッキリしていませんが)、小さいなお子さんには昆布などの出汁を使って本物のうま味成分のグルタミンを摂らせてあげてください。
グルタミン酸は記憶力のアップ効果も期待できます。
ですが過剰摂取は「舌がしびれる」または「偏頭痛」などになる危険性があります。
今後もテレビではグルタミン酸ナトリウムの危険性や安全性について紹介されることはありません。
知らないうちに摂取していることが多いので、アミノ酸等と書かれている加工食品や外食でラーメンの食べ過ぎは気を付けてください。