ハンバーグなどに使われるスパイスとして知られるナツメグ。以前、大量のナツメグを使用したハンバーグを食べた夫婦が中毒症状を起こして病院に搬送されたというニュースがありました。

家庭で普通に使われるスパイスで中毒を起こしたという内容は、衝撃を受けた方も多かったのではないでしょうか。

実はナツメグは、正しい使い方をすれば私達の強い味方になってくれる効能がたくさんある、優秀なスパイスなのです。

ナツメグとは?

ナツメグ
ナツメグパウダー

ナツメグは、

  1. Nut(豆)
  2. Meg(ムスク)

という2つの単語が合わさって出来たものと言われています。

ムスクとは

香料、生薬の一種ですが、非常にエキゾチックな香りとして知られています。ナツメグは、ムスクのような香り高い豆という意味を持ったスパイスなのです。

世界4大スパイス

ナツメグ

  • コショウ
  • シナモン
  • クローブ

と共に世界4大スパイスにも数えられています。インドではアーユルヴェーダで使われてきた歴史があり、中国では痛みを和らげたり整腸作用のある漢方薬として古くから利用されてきました。

また古代エジプトでは、ミイラの防腐剤としても使われていたといいます。

ナツメグの特徴

ナツメグは、ニクズク科に分類され、一年中緑の葉をつけて樹高が高いという特徴の常緑高木になります。樹高は約20メートルにもなりますが、種を撒いてから7年後以降に実をつけるので成長は比較的遅いというのが特徴です。

インドネシアのモロッカ諸島が原産で、スリランカや西インド諸島のグレナダが主な産地となります。ナツメグは、種子の中の(種子の核の部分)を乾燥させて粉末にしたものです。

ちなみに、種皮(種の周りを包むもの)を乾燥させたものをメースといい、ナツメグよりも上品な風味を持っていると言われ、12世紀のころはナツメグよりもメースの方が価値が高かったとされています。

ナツメグに含まれる豊富な栄養素

ナツメグはミネラルビタミンが豊富なハーブです。主な栄養素は、

  • ミネラル:銅、マンガン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど
  • ビタミン:ビタミンA、ビタミンB1、B2、ナイアシンなど

が含まれています。

ナツメグが持つ優れた効能とは

疲労回復

ナツメグは、糖質の代謝に欠かせない栄養素であるビタミンB1の吸収を高める効果があるとされています。それにより新陳代謝を促進することで、疲労を回復させる効果が期待できるのです。

ビタミンB1が豊富に含まれる豚肉料理などに、ナツメグを使えば疲労回復効果が期待できますね。

ストレス軽減・リラックス効果

ナツメグの独特の香りの成分は、α-ピネンと呼ばれるもので、ヒノキやスギなどの森林の香り成分と同様の働きをするとも言われています。

そのため、「脳を刺激しリラックスさせるだけでなく、気持ちをリフレッシュさせて頭をスッキリさせる効果が期待できる」とされています。また、集中力を高める効果もあるとされ、実際、インドの研究では、記憶力や学習能力が向上したという結果も出ています。

集中力を保ちたいときなどは、普段のコーヒーなどにナツメグを一振りするといいですね。

痛みを和らげる作用

ナツメグには、強力な鎮痛作用(痛みを和らげる作用)があるとされ、古代中国においては鎮静剤として定番だったとも伝えられています。使用方法も簡単で患部に直接ナツメグを塗るというものです。

炎症腹痛などに対して特に効果を発揮すると言われ、関節痛、関節炎、筋肉痛を和らげて身体を楽にしてくれます。

消化改善

ナツメグは、漢方では胃腸炎などの薬として処方されているのをご存知ですか?ナツメグに含まれるピネンは「胃の働きを正常化し、消化を助ける効能があり、胃粘膜も保護する」と言われています。

また、腸から余分なガスを取り除いて、胃を和らげ、食欲も高めてくれる効果も期待できます。実は、胃腸薬の太田胃酸にも「ニクズク」として配合されているのをご存知でしょうか。

さらにピネンには、体を温めて発汗させる作用のほか、熱を下げる作用もあるので、風邪をひいたときに少量を摂るのもおすすめです。また、整腸作用のあるミスチリンも含まれており、下痢止めとしての効能もあります。

口臭の予防

ナツメグの香り成分の一種であるオイノゲールには、「消臭効果や殺菌、抗菌の効果」があり、歯磨き粉やマウスウォッシュなどの口腔ケアの商品に幅広く使われています。

口の中の細菌を退治し、細菌の増殖を抑えてくれることにより口臭の予防につながります。

肝臓と腎臓のデトックス

現代人は、極度のストレスにさらされ、たばこや食品添加物、ダイオキシンなどの空気汚染などの影響により体に様々な毒素がたまりやすい環境で生活しています。

そして、その毒素は肝臓や腎臓に蓄積されやすいと言われています。

ナツメグはこれらの「臓器の強壮剤」として、毒素をキレイにしてくれ、また「腎臓結石の予防」にも有効との報告がされています。

睡眠サポ―ト

眠りにつけない夜には、ミルクにナツメグパウダーを溶かしたナツメグミルクが、精神的なリラックス効果と眠気を産み出してくれます。海外では眠れない子供に、ナツメグパウダーを少し溶かしたホットミルクを飲ませるというのが一般的なのだそうです。

白血病やアルツハイマー病にも

ナツメグ白血病アルツハイマー病などへの効果も期待されています。アルツハイマー病にはミリスチシン白血病にはメタノール性化合物が効果を発揮するのではないかと考えられています。

これから、さらに研究が進むことに期待したいですね。

白髪予防

毛髪の黒い色素は、を元に作られているのをご存知ですか?などのミネラルが不足すると、健康的な黒髪が生えてこなくなったり、白髪が増えるとされています。

ナツメグには、この黒い色素の元になる銅が豊富に含まれています。最近白髪が気になり始めたという方は、毎日の食事にナツメグを取り入れてみてはいかがでしょう。

ナツメグの中毒の危険性

ナツメグの副作用が出る量は、5グラム以上とされています。

5グラム以上を一度に摂取するとマリファナにも似た幻覚作用が訪れると言われています。

1時間から8時間後に症状が出ると言われ、幻覚症状以外には

  • 低血圧
  • 呼吸が不規則になる
  • 胸部の圧迫を感じる

などになることもあるようです。

また神経系には興奮不安多幸感などのさまざまな症状があります。その他、吐き気頭痛めまい動悸痙攣下痢などの症状が現れた場合には、すぐに病院を受診したほうが良いでしょう。

ちなみに、通常のお料理で、お肉の臭い消しとして使用する場合の量は0.2グラムから0.5グラム(一振りから二振り)程度です。

ナツメグの中毒症状で搬送された事例

ハンバーグに一瓶すべてのナツメグを入れてしまったそうです。ですので、それほど神経質になる必要はありません。ただし、ナツメグ過剰摂取が原因と見られる死亡者が過去に2名出ているのも事実です。

致死量ラインはナツメグ2個分とされています。これは、8歳の子供の死亡例が根拠とされているためです。

ナツメグ1個分の重量は4~5g程度になるので、2個分は8~10g位になります。食塩も致死量(体重60㎏で30g)がありますが、これが食べ物に入っていたら、しょっぱ過ぎて口からすぐに出すと思います。

一方で幻覚作用が出るナツメグ5gや致死量の10gは違和感があってもカレーに含まれていると気が付かずに食べてしまう可能性も高いので注意しましょう。

ナツメグに限らずですが、小さなお子さんがいるご家庭では、スパイスの摂取量には気をつけましょう

妊娠中の方は注意

妊娠中の方は、ナツメグの摂取にさらなる注意が必要です。過去にナツメグは堕胎薬に使用されていた歴史もあります。

アロマでの長時間の使用も、妊娠中はできるだけ避けた方が良いようです。

まとめ

ナツメグはミネラルとビタミンが豊富なハーブ。

ナツメグの効能

  • 新陳代謝を促進することで、疲労を回復させる効果が期待できる。
  • 脳を刺激しリラックスさせ、頭をスッキリさせる効果が期待できるとされています。
  • 強力な鎮痛作用(痛みを和らげる作用)があるとされています。
  • 胃の働きを正常化し、消化を助ける効能があり、胃粘膜も保護。
  • 体を温めて発汗させ、熱を下げる作用もある
  • 口の中の細菌を退治し、細菌の増殖を抑え口臭の予防効果
  • 肝臓と腎臓のデトックス効果
  • 精神的なリラックス効果と眠気を促す
  • 白血病やアルツハイマー病などへの効果も期待
  • 銅が豊富に含まれていることにより白髪予防効果

ナツメグの中毒の危険性

  • 副作用が出る量は、5グラム以上致死量は10g程度(ナツメグ2個分)
  • マリファナにも似た幻覚作用が表れるとされる
  • お肉の臭い消しとして使用する場合の量は0.2グラムから0.5グラム(一振りから二振り)程度
  • 妊娠中の方は、過去にナツメグは堕胎薬に使用されていた歴史もありますのでできるだけ避けた方が良いでしょう。

いかがでしたか?
身近にあるスパイスでも、使い方を誤れば恐ろしいものになってしまいますが、適量を守りさえすれば、私達の優秀な助っ人になってくれます。

気温差が激しいこの季節、体調も崩しがちですが、スパイスの力を借りて上手に乗り越えましょう。