カカオはチョコレートやココアの原料として知られていますが、最近は健康や美容に良いと認知されてきています。ただし、それは普通のチョコレートではなく、「高カカオチョコレート」と呼ばれるカカオがたくさん含まれているものではないと効果が期待できません。なぜ高カカオチョコレートが注目されているのか、注目の栄養成分と効果効能や摂取量、選び方、注意点についても紹介します。
カカオとは?その特徴について
カカオは中央アメリカから南アメリカにかけての熱帯地域原産の常緑樹で、4000年前から自生していたと言われています。カカオの学名は「テオブロマ カカオ」です。
これはスウェーデンの科学者が豊富な栄養価から「神々の(テオブロマ)カカオ」と名付けたほどです。かつては王族や貴族、お金持ちしか口にすることができないくらい貴重な食べ物でした。
カカオ豆はカカオポッドと呼ばれるラグビーボールのような形のカカオの果実の中にある種子です。
乾燥させたカカオ豆の外皮と胚芽を取り除いたものがチョコレートやココアの原料になります。スーパーフードとしては
- 外皮と胚芽を取り除いたものを粗く粉砕(ふんさい)した「カカオニブ」
- 細かいパウダー状に粉砕して脂肪分をカットした「カカオパウダー」
として使われます。
高カカオチョコレートとは?
最近人気の「高カカオチョコレート」とは一般的に「カカオ分が70%以上のチョコレートのことを指します。つまりチョコレートの中にカカオ豆由来の成分(カカオマスおよびココアバター)が70%以上入っている必要があります。
チョコレートの主原料はカカオ豆の胚乳部である「カカオニブ」をすりつぶして得られるペースト状の「カカオマス」とカカオマスからしぼり取った「ココアバター」です。
カカオ100%のチョコレートはカカオマスとココアバターだけの状態です。もちろんそれだけでは全くおいしくありません。そこに砂糖や乳製品などの副材料を足していくとカカオの割合(%)が下がっていきます。
スーパーなどで販売されているチョコレートはカカオ分は35%位の商品が多いです。実際に商品の箱の裏の原材料名を見てみると一番最初に「砂糖」と表記されている物ばかりです。
※原材料は多く含まれている順番に表記することが決まっています。
これは砂糖が多いほうが食べやすいということもありますし、カカオの価格が砂糖より高いので価格を抑えるために他の原料を使用しています。
ただこれだとカカオの量が少ないため効果や効能を実感することが難しくなります。
カカオの効果を期待するのであれば「カカオマスが含まれているカカオ分70%以上の商品」を選ぶようにしてください。
高カカオ70%のチョコレートの成分構成例は
- カカオマス(55%)+ココアバター(15%)=カカオ分70%
- 砂糖・乳製品など(30%)
となっています。
ちなみにホワイトチョコレートはココアバターのみ(カカオマスはゼロ)で作られています。
カカオに含まれる注目の栄養成分
◎カカオポリフェノール
カカオポリフェノールは聞いたことがある人も多いかもしれませんが、これはひとつの種類ではなく、いくつかの成分が含まれた総称です。その中心の成分がプロシアニジンです。
カテキンがいくつか結合した構造を持っていてかなり強い抗酸化作用があります。
◎テオブロミン
こちらもポリフェノールの一種でありますがプロシアニジンとは働きが違います。テオブロミンはストレスやイライラ解消におすすめの成分です。
◎カカオプロテイン
最近注目されているタンパク質です。
以前はプロシアニジンなどのカカオポリフェノールが注目されていましたが、それだけでは説明できない効果に関する報告がありカカオプロテインの研究が進んでいます。
◎ミネラル
現代人が不足気味のミネラルですが不足すると健康や肌への悪影響が懸念されるので、しっかりと摂りたい成分です。
カカオに豊富に含まれている主なミネラルは
- カルシウム
- マグネシウム
- 鉄
- 亜鉛
- 銅
になります。
これらがカカオの注目の栄養成分ですがカカオニブや高カカオチョコレートを食べることによってどのような効果が期待できるのでしょうか?
カカオの効果や効能について
①動脈効果・生活習慣病の予防
悪玉の活性酸素は一定上に増えてしまうと細胞の老化を促進してしまいます。
ですが活性酸素は
- ストレス
- 加齢
- 紫外線
- 喫煙
- 不規則な生活(寝不足・暴飲暴食)
などといった避けられない条件がたくさんあります。
そして毛細血管が老化すると血液の流れが悪くなり動脈硬化なりやすく、悪化すると心筋梗塞や脳梗塞など大病にかかる可能性が高くなります。
それだけでなく糖尿病、高血圧などの生活習慣病やガンなどさまざまな病気にもかかりやすくなってしまいます。ただ、毎日忙しい中で規則正しい生活ができない、ストレスを貯めないというのはとても難しいです。
そのような方はせめて強力な抗酸化作用を含んでいる高カカオチョコレートやカカオニブ、ピュアココアなどカカオが多く含まれている食べ物を摂ることを習慣づけましょう。
カカオに含まれているカカオポリフェノールの一種で強力な抗酸化作用のあるプロシアニジンが悪玉活性酸素の増加を防ぎます。
実際にプロシアニジンを摂取した人体実験では下記のような結果が出ています。
- 動脈効果リスクの低減
- 高血圧の抑制
- 高血糖の抑制
- 肥満・脂肪蓄積抑制
抗がん作用やアレルギー抑制の効果も期待されている成分ですが、今はまだ研究段階なのとプロシアニジンは単一の成分名ではなく、カテキン(またはエピカテキン)の重合体の総称なので、重合度や結合位置で多くの種類のものが存在します。
そのため個々の物質によって効果が異なることも予想されます。
病院の治療でチョコレート?
2015年に全国初の専門外来「嗜(し)好品外来」が埼玉県に誕生しました。(つまり病院です)その主な目的は生活習慣病の予防で患者さんに高カカオチョコレートを日常に取り入れること推奨しています。
チョコレートが生活習慣病に効くというイメージはあまりピンとこないかもしれませんが、実際に病院の治療で取り入れていることを聞くと、「やはりチョコレートは健康に良い食べ物なんだ!」と実感できますね。
ただし高カカオチョコレートは薬ではないので即効性はありません。継続して食べることで効果が期待できますし、食べ過ぎには注意が必要です。
②美肌・美白効果
悪玉活性酸素が増えすぎると肌にも悪影響を与え、シミやしわ、たるみなどが増えてしまいます。
これもプロシアニジンなどのカカオポリフェノールを摂ることで肌の老化の防止効果や紫外線で増えるシミの元となるメラニンの生成を抑制する効果も期待されています。
③リラックス・集中力を高める効果
ポリフェノールの一種のテオブロミンには血行を良くして、緊張をやわらげる作用があるためストレスやイライラの解消におすすめです。また大脳を刺激し、集中力や記憶力、思考力をアップさせる働きもあります。
そしてカフェインよりはおだやかですがテオブロミンは覚醒効果もあるので仕事や家事、勉強している時の一休みにチョコレート食べたり、ココアを飲むのは最適です。
④整腸作用・便秘解消効果
この効果はタンパク質の一種のカカオプロテインによるものです。カカオプロテインは消化されにくい性質(難消化性)のため、小腸で吸収されずに大腸まで届きます。
これは便通改善に効果があると言われている食物繊維のようにお通じを改善させる働きがあります。
また、カカオプロテインは「善玉菌のエサ」になると言われています。
高カカオチョコレートを毎日摂取することで長寿の人の腸内に多く存在すると言われているフィーカリバクテリウムなどの短鎖脂肪酸が増えると言われています。
そして腸内に短鎖脂肪酸が増えるとぜん動運動などの活発化により便通改善だけでなく、
- 大腸がんの抑制
- 炎症性腸疾患(IBD)の予防
- インスリンの分泌促進による糖尿病の予防
なども期待されています。
たかが便秘とあなどってはいけません。便秘の原因の多くは腸内環境が悪いことで起こりやすくなりますが実は人の体の免疫システム全体の70%が腸に集中してると言われています。
つまり腸内の環境が悪いと、ただ便秘になるというだけでなく免疫力が下がるので病気にもかかりやすくなります。
便秘状態が長く続くと腸内で腐敗が進行し有害物質を生成してその結果、
- 下腹部不快感
- 膨満感
- 腹痛
- 吐き気やおう吐
- 肌荒れ
などの症状が現れることがあります。
そして近年便秘の増加に比例して大腸がんの死亡率も急増しています。特に女性はがんの中でトップです。便秘を軽く考えずに初期の状態で治すことを心がけましょう。
実際に高カカオチョコレートを継続的に食べた実験では1週間で排便の回数が増加したというデータもあります。
色々試したけど便秘が改善しなかったという人はぜひ高カカオチョコレートやカカオニブなどカカオがたくさん含まれている食べ物を試してください。
⑤ミネラルの働きと効果
カカオに含まれている主なミネラルは
「カルシウム」
カルシウムは骨や歯の形成に欠かせない成分で不足すると骨粗しょう症や骨折の原因となります。
また精神を安定させる作用があるので「最近イライラするなあ」と感じたらカルシウム不足の可能性があります。
「マグネシウム」
マグネシウムは約300種類の酵素の働きをサポートします。カルシウムとの関わりが深く、筋肉細胞の中に入り込むカルシウムの量を調節して筋肉の収縮を促します。
またストレスが生じるとマグネシウムの消費が増えるのでしっかり摂るようにしましょう。特にカカオはカルシウムとマグネシウムのバランスが良いと言われています。
※このバランスが悪いと心臓病や高血圧のリスクも高まると言われています
「鉄」
鉄は赤血球をつくるのに必要な栄養素で、不足すると 疲れやめまい、貧血、頭痛、食欲不振などがおこりやすくなります。
「銅」
銅は血球の形成や体内酵素の正常な働きを助けます。鉄と銅をしっかり摂ることで貧血の予防が期待できます。
「亜鉛」
亜鉛は味覚を正常に保つのに必要な栄養素で皮膚や粘膜を健康に維持するにも欠かせない成分です。
現代人が不足しているミネラルは体内でたった4%しか含まれていない成分ですが、いくらビタミンを摂取してもミネラルを摂らないと効果を得ることができないと言われていますので美容や健康に大きく影響します。意識してミネラルを摂るようにしましょう。
高カカオチョコレートの1日の摂取量と食べるタイミングは?
高カカオチョコレートは普通のチョコレートと比べると砂糖が少ないので、その分多く食べても良いのでは?と思うかもしれませんがそうではありません。
実は高カカオチョコレート100g(板チョコ約1枚分)には「30代女性の1日分の脂質摂取量に匹敵する脂肪」が含まれていますが、これはカカオに含まれる脂質の量が多いためです。
脂質は他の食べ物にも含まれるので、それを考慮すると1日の理想の摂取量は25g多くても50gまでにしましょう。
またカカオポリフェノールの効果は摂取した後で数時間しか持たないので食べるタイミングは1回で1日分を摂取するよりも数回に分けて食べるのがおすすめです。
高カカオチョコレートなどカカオ製品の摂取の注意点
脂質の摂り過ぎやカロリーオーバー以外にも注意点があります。カカオ豆にはテオブロミンやカフェインが含まれていて、それ自体はリラックス効果や脂肪燃焼を促進するなど良い効果をもらたします。
ですが過剰に摂取すると利尿作用や興奮作用を高めてしまう可能性があります。これらはチョコレートだけではなくココアやガム、お茶、コーヒー、コーラ、栄養ドリンクなど様々な食品に含まれています。
特に眠くならないようにと短時間で大量に摂取すると吐き気やめまいなど具合が悪くなるときがあります。特にテオブロミンやカフェインの影響は小児・妊婦・授乳中の女性に影響が出やすいといわれているので気をつけましょう。
また、チョコレートに含まれているチラミンには血管を収縮される作用があり、その後でチラミンの効果がなくなり血管が拡張されると片頭痛を引き起こす可能性があります。
他にチラミンが含まれている食品はワイン、チーズ、ピーナッツバターなどがありますが、ワインと一緒にチーズやチョコレートを食べる人も多いですよね。
この場合ワインの飲み過ぎで頭痛がするのではなく、チラミンの摂り過ぎの可能性があります。またポリフェノールも血管を拡張する作用があるのでこちらも取り過ぎは頭痛を招きます。
特にチョコレートは過剰摂取すると頭痛を引き起こすチラミンとポリフェノールが両方含まれているので注意が必要です。チョコレートはついつい食べてしまう食べ物なので、摂取量には十分に気をつけてください。
高カカオチョコレート選び方とおすすめ商品
今はスーパーなどでもカカオ成分が70%以上の高カカオチョコレートが手に入ります。
それを食べても効果があるのですが原料のカカオにも高品質や低品質のものがあるので、できれば質の良い原料を使用したチョコレートを選びましょう。さらにカカオ以外の原料にもこだわってください。
70%のカカオにこだわっていても残りの30%の原料の質が良くなければ意味がありません。ここではおすすめの高カカオチョコレート2つを紹介します。
①有機アガベチョコレートダーク70%
製造元のダーデン社はフランスで1897年創業のオーガニックチョコレート専門メーカーです。
原料のカカオマスが有機(オーガニック)だけでなく砂糖の代わりに低糖質で人気の甘味料アガベパウダーやカカオバター、バニラパウダーまで全てオーガニックのものを使用しています。
有機(オーガニック)は農薬や化学肥料を使用していないので、安心して食べることができます。
②ヴィヴァーニオーガニックエキストラダークチョコレート92%
「ヴィヴァーニ」はドイツの創業100年以上の老舗メーカーです。こちらも原料は全てオーガニックで砂糖の代わりに有機ココナッツシュガーを使用しています。
カカオ分92%だと全く甘くなくて食べにくいと思うかもしれませんがほのかな甘みがあってとてもおいしく食べやすいチョコレートです。できるだけカカオ分が高い方が良い方はこちらをおすすめします。
ヴィヴァーニ オーガニックエキストラダークチョコレート92% 80g
まとめ
◎カカオの注目の栄養成分と効果効能
カカオポリフェノール
(とくにプロシアニジン)
- 生活習慣病予防
- 美肌効果
テオブロミン
- リラックス効果
- 集中力を高める
カカオプロテイン
- 整腸作用
- 便秘解消
1日の高カカオチョコレートの摂取量は25g(板チョコの4分の1枚程度)多くても50gまでにする。過剰摂取は脂質過剰やカロリーオーバーだけでなく、吐き気や頭痛をもたらす恐れがあるので注意しましょう。
カカオポリフェノールの効果が数時間なので少量を分けて食べるのがおすすめです。
チョコレートはついつい食べ過ぎてしまいますが、適量(25g程度)で多くの効果や効能をもたらしてくれますので毎日少しずつ継続して食べてください。
チョコレートのイメージをつくがえす高カカオチョコレートを毎日継続的に食べて、健康的に美しくなりましょう!