ここ最近「グルテンフリー」という言葉をテレビや雑誌などでも目にすることが多くなっています。
実際に最近では
とか
など小麦粉や大麦などの穀物に含まれる「グルテン」が体に害を与えるため、「小麦を食べるのを今すぐやめなさい」と紹介してます。
最近はグルテンが含まれていない「グルテンフリー」の食べ物も人気が高まっていて、私も以前は「小麦は身体に悪んだ!」と思っていました。
ですが、「1万年以上前から食べられていて、世界3大穀物の一つである小麦(米、トウモロコシ、)が昔から多くの人に害を与えていたのであれば、3大穀物に選ばれるのだろうか」
という疑問をいだきました。
今回は
- グルテンとは?
- 小麦を含んでいる食べ物
- 小麦粉が脳と体に悪いと言われる理由
- グルテンフリーで健康になれるのか
など小麦粉やグルテンについて詳しくわかりやすく紹介します。
小麦に含まれるグルテンとは?
グルテンは小麦などの穀物に多く含まれるタンパク質の一種で、パンやケーキ、パスタなどをふわふわふくらませたり、もちもちとした感触を出すのに関係している成分です。
小麦粉にはグリアジンとグルテニンという2種類のタンパク質が含まれていて、水を加えてこねると2つのタンパク質が絡み合い粘りや弾力性のあるグルテンになります。
つまり、グルテンはもともと小麦に含まれている成分ではなく人工的に作られたタンパク質です。
グルテンフリーとは?
グルテンフリーは「グルテンが無い」、簡単にいうと「食生活でグルテンを摂らないこと」を指しす。
小麦粉などグルテンになるタンパク質を含んでいる食べ物を摂らないダイエット法を「グルテンフリーダイエット」と言い、ハリウッドセレブなどが実践して美しくやせたとして話題の健康法として注目を集めています。
その他にもテニスの元世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手もグルテンフリーの食事法を実践して飛躍的に成績が上がったとして書籍を出版して話題になりました。
この本を簡単に紹介しすると
試合中によく倒れていたジョコビッチ選手がイゴール・セトジェビッチ博士にグルテンフリーの食事をすすめられて実践したところ、
- 体が軽くなる
- 活力が湧いてくる
- 14年間悩まされていた夜間の鼻づまりが突如消え去る
などの変化が現れ、2011年に3つのグランドスラム大会制覇、12カ月間で51戦中50勝という記録を達成する快挙を成しとげました。
このように「グルテンフリー」の食生活を送ることで「キレイなれる」、「健康になる!」と広まって実践する人が増えて、「グルテンフリーの食べ物」の人気が高まりました。
ではどのような食べ物にグルテンが含まれているのでしょうか?
小麦やグルテンを含んでいる食べ物
小麦や大麦、ライ麦などを調理加工するときに生成されるのがグルテンですが、特に注意するのは小麦です。
- パン
- パスタ、うどんラーメン、そば(十割そばを除く)などの麺類
- ケーキやクッキー、ドーナツなどの菓子類
- お好み焼きやたこ焼き
- 中華まん、餃子など
これらの食べものは「グルテンの特徴であるモチモチとした食感」があることから小麦粉を使用しているとイメージしやすいですね。
- フライや天ぷらの衣
- シチュー及びカレーのルー
- しょう油やソースなどの調味料
- ドレッシング
- ビール、やウイスキー、焼酎などの酒類
- 一部の食品添加物など
※これらの食べ物全てに小麦粉が入っているというわけではありません
このように毎日の食生活において常にグルテンが存在していると言ってよいでしょう。
そしてこの人工的に作られたグルテンというタンパク質はもともと地球上には無かったものでそれを現在多くの人が大量に摂取している状況にあります。
ではこのグルテンが脳や体にどのような悪影響を及ぼすという結果が出ています。
小麦粉が脳と体に悪いと言われる理由
小麦粉が脳や体に悪いと言われるのはまずはグルテンが挙げられるのですがグルテンの何が問題なのでしょうか?
ここでは世間で言われている「グルテンを摂取することでの悪影響」を紹介します。
①セリアック病を引き起こす
昔からグルテンが引き金になっている病気に「セリアック病」があります。
セリアック病はグルテンにより小腸がダメージを受けて栄養が吸収できなくなる病気です。
症状は腹痛や下痢、便秘、体重の減少などがあるものの、50%の人は明らかな症状がなく、また、過敏性腸症候群などの他の疾患と診断されることも多いのでセリアック病と気づかない場合も多いです。
ただし一度セリアック病を診断されると一生涯にわたりグルテンフリーを続けないと必要な栄養が吸収できなくなってしまう怖い病気で、セリアック病罹患率はアメリカ・イギリスでは約1%、日本でも0.7%と言われています。
これは20世紀中頃と比べると4倍~5倍の人がセリアック病だと診断されているようです。
②グルテン不耐症(過敏症)を引き起こす
セアリック病に見られる特殊抗体がないもののグルテンに反応をしてしまう人が近年急増しています。
それがグルテン不耐症(または過敏症)です。
これはグルテンにより何らかの不調が出るアレルギー体質であり、グルテンをとることで腸の免疫システムがグルテンを異物と判断して過剰に反応することで炎症を起こしてしまいます。
小麦は5大アレルゲンの一つですが、それほどアレルギーになりやすい食べ物です。
ただグルテン不耐症に関しては自覚症状がないケースも多く、
- 慢性的な疲労感
- 下痢、便秘、
- 集中力の低下
- 肌荒れ
- PMS(月経前症候群)、生理不順
- 不妊
- アトピー
- ぜんそく、鼻炎など
さまざまな症状があるため原因がグルテンにあるとは思いもしないのです。
先ほど紹介したジョコビッチ選手もグルテン不耐症だったと本の中で紹介されています。
③リーキーガット症候群をひきを起こす
リーキーガット症候群とはグルテンなどが原因で小腸の粘膜に穴が空いて菌・ウィルス・たんぱく質などの異物が血液中にあふれ出て次のような症状が出やすくなります。
- 食物アレルギー
- 統合失調症
- IBS(過敏性腸症候群)
- 体臭がきつくなる
- アトピー性皮膚炎
- 花粉症
- 喘息・偏頭痛
- 下痢・便秘・関節炎
- 更年期障害・子宮筋腫
- カンジダ膣炎など
※リーキーガット症候群の原因はグルテン以外に糖質やアルコールの摂り過ぎなども挙げられます。
アトピーや花粉症などのアレルギーは近年パンやパスタ、ラーメンなどをたくさん食べる習慣になってから増えてきています。
④脳への悪影響
グルテンは麻薬のような中毒性があります。
「ダイエットをしたくてもパンやパスタがどうしてもやめられない」というのは意志が弱いからではありません。
人間の体はアミノ酸の配列で物質を認識していますが、小麦のアミノ酸の配列はモルヒネに似ているため中毒症状を引き起こしやすいと言われています。
つまりハイになったり、イライラしたり幻覚や妄想まで起こします。
さらに心の安定に欠かせないセロトニンやGABAが出づらくなったり、神経を興奮させるノンアドレナリンを過剰に分泌させてしまいます。
すると
「記憶があいまいなる」
「情緒が不安定になる」
「うつになる」
「興奮しやすくなる」
といった症状を引き起こす可能性が高くなります。
⑤老化や病気の原因の活性酸素を増やす
老化や病気の原因のひとつに活性酸素が挙げられます。
活性酸素自体は悪いものではありませんがある一定以上に増えてしまうとしみ、シワが増えるなどの老化が加速したり、病気にかかりやすくなったりするので注意が必要です。
活性酸素が発生するのはストレスや喫煙、アルコールの飲み過ぎ、激しい運動、紫外線などの他に、グルテンの摂取も関係があると言われています。
グルテンは持続的に腸の粘膜で炎症を起こし活性酸素を体内に送り続けるので、そのため老化が進みやすくなったり疲れやすくなったりします。
⑥肥満の原因となる
グルテンフリーダイエットが注目されていますが、これはパンやパスタなどを食べないでカロリーを減らすのが目的のダイエットではありません。
グルテンをとらないだけでカロリーを気にせず食べてもやせるダイエット法です。
ではなぜグルテンフリーにするとダイエットにつながるのでしょうか?
先程グルテンをとるとリーキーガット症候群になりやすくなると説明しましたが、これは腸の炎症だけでなく肝臓の炎症ももたらします。
肝臓の炎症は血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効き具合(インスリン抵抗性)が下がって血糖値が上がりやすくなってしまいます。
するとインスリンが大量に分泌されるようになって中性脂肪をどんどんため込んで細胞が肥大化していきます。
それだけでなく先程説明したようにグルテンには麻薬の作用があるので食べれば食べるほどもっと欲しくなってしまう恐れがあります。
このようにグルテンフリーをすることで血糖値が上がりにくくなり、食欲もコントロールできるので自然にやせやすい体質になると言われています。
以上のような危険性がグルテンを過剰摂取することによって引き起こされる可能性があると言われていますが、本当に全てグルテンが原因なのでしょうか?
実は
- 小麦アレルギー
- セリアック病
- リーガーキット症候群
- グルテン不耐症
についてはグルテンが原因の可能性が高いですが、それ以外の病気や症状に関しては必ずしもグルテンが原因とは言えません。
グルテン以外に問題はないのか?
小麦に含まれるグルテンが悪いとなると、「高品質の小麦もグルテンが含まれているから食べてはいけない。」となってしまいますが、はたして本当にそうなのでしょうか?
1万年以上前から食べられている小麦がこれだけ悪影響を及ぼす食べ物だったら途中で生産をためるはずですし、3大穀物となるほど多くの人に広まるのか疑問です。
そこでグルテン以外の問題について紹介します。
①品種改良による問題
現在小麦は遺伝子組み換えは欧米でも行われておりませんし日本でも輸入は禁止されています。(ですが一部で遺伝子組み換え小麦は見つかっています)
その代わりパンやパスタなどをおいしくなるようにと交配したり、放射線照射などで品種改良を重ねた品種のため、含まれるタンパク質や糖質が人の身体に合っていない可能性があります。
近年小麦はアメリカから最も多く輸入していますが昔の小麦と違い現在の小麦は収穫量を増やすため、病気や日照り、高温などに耐えるように品種改良により作られた小麦が多く、人工的な硝酸塩肥料や有害生物防除なしでは育だちません。
実際に品種改良によりグルテンの量が古代の小麦よりも増えています
このことから古代小麦と比べて現代の小麦は全く違うものとなり、その他の栄養素の組成の変化などを指摘する意見があります。
②農薬や化学肥料などによる問題
小麦を育てるには農薬や化学肥料を大量に使用しますが、それだけでなく輸出する際にはポストハーベスト(輸出に伴う大量の農薬や、殺虫剤、防カビ剤用)の心配もあります。
国産小麦も農薬や化学肥料は使用されていますが、ポストハーベストの心配はなく、グルテンの量も少ないと言われています。
国産の有機小麦を使用したパンなども販売されていますので、そのようなものを選ぶようにしましょう。
➂加工食品の原料の問題
小麦粉を使った加工食品(ケーキやお菓子、菓子パン、冷凍食品など)には、体に悪い食品添加物などの原材料が使われていることが多いです。
パンで比べてみても、
普通にスーパーなどで売られているパンには小麦粉改良剤、乳化剤、酸化防止剤、膨張剤、保存料など二十種類もの化学物質の添加を許されていて、食パンんはもちろん、菓子パンになると多くの添加物や体に良くない原材料を使用しています。
一方で手作りで原料にこだわったパン屋さんの天然酵母を使ったパンでは、こうした添加物を使用する必要がありません。
これらのパンを食べ続けた場合、どちらが体に悪いのかは一目瞭然ですね。
このように単にグルテンだけが悪いというわけではなく、グルテン以外の悪影響も考えられるわけです。
そのため、
- 小麦アレルギー
- セリアック病
- グルテン不耐症(過敏症)
- リーキーガット症候群
これらの症状の人は小麦などに含まれるグルテンは摂らないほうが良いですが、それ以外の健康な人が健康のためにグルテンフリーを実践しても良いのか疑問です。
健康な人にはグルテンフリーをおすすめできない?
小麦を使用したパンやうどんなどは糖質が高く、食べ過ぎると肥満や血糖値が高くなって糖尿病にかかりやすくなります。
ですが、全く取らなくても問題ないのでしょうか?
実は自ら「今日からグルテンフリーになろう!」と決めてしまうのは危険です。
英国医学誌BMJ誌に報告された研究では、
セリアック病ではない人がグルテンフリー食にした場合、心臓と血管の病気になるリスクが高くなる怖れがあるという結果も出ています。
その理由は全粒穀物を取る量が減るからです。
小麦粉の場合は精白された白い小麦ではなく、未精製の全粒粉のこと指しますが、全粒穀物には穀物を精製する過程で失われるビタミン、ミネラル、食物繊維が、そのまま残っています。
特にグルテンフリーダイエットをすると食物繊維が不足してしまう傾向にあります。
この研究では、セリアック病ではない10万人を対象にグルテンフリーの影響を26年にわたって調査しました。
その結果、グルテンフリー食で全粒穀物が不足した人は、食物繊維を取る量が大きく減って、心臓と血管の病気になるリスクが増えました。
この研究に参加したハーバード大学医学部准教授、アンドリュー・チャンさんによると「食事でグルテンを取る量が最も少なかった人たちは、心臓の病気になるリスクが15%高くなりました」と述べています。
このようにグルテンフリーダイエットにはリスクを伴いです。
もちろんだからといって小麦製品を食べて良いという意味ではなく、もし小麦を食べるのなら栄養価が高い全粒粉の小麦を食べることをすすめています。
もちろん小麦ではなく、食物繊維が豊富な大麦やオーツ麦(えん麦)でも、そのほかの食物繊維が豊富な食べ物でも構いません。
ジョコビッチ選手はグルテン不耐症だったので、パスタやピザなどを食べなくなって体調が戻りましたが、健康な人が同じように実践する場合は慎重に考えてください。
まとめ
セリアック病やグルテン過敏症、リーキーガット症候群の方はグルテンフリーをおすすめします。
ですが、その他の病気や症状の場合は必ずしもグルテンだけが原因だと決めつけないようにしましょう。
現在の小麦は品種改良によりグルテンの量が増えたり、農薬などの問題もあるので、特に精製された白い輸入小麦の食べ過ぎには注意が必要です。
国産の有機全粒粉の小麦を使用したパスタやパン、そして現在は古代小麦のアインコーンなどを使用したパンやパスタも注目されています。
品質の良いものを選びましょう。
これらの良質な小麦を使用したパンにもグルテンは含まれていますが外国産に比べて量が少なく、その他の栄養素も摂ることができます。
最近は全くグルテンを取らないグルテンフリーの食事をする人が増えていますが注意が必要です。
病気にかかっていない健康な人がグルテンフリーの食生活を送ることによりさらに健康になるのかというと検証を証明する研究発表は全くありません。
グルテンフリーを心掛けて健康になる人もいれば、もともと小麦粉製品をあまり食べない人はそれほど変わらない場合もあります。
そのため「グルテン=危険」というのは必ずしも全ての人に当てはまるわけではありませんし、小麦アレルギーの人もグルテン以外の原因でかかってしまう場合もあります。
またグルテンフリーの食品はなんでも健康に良いのではなく糖質が多い食べ物もあれば、食品添加物が大量に使用されていたり、栄養が偏る場合もあります。
「グルテンフリー」=「安全」というのは必ずしも当てはまりません。
バランスよい食事を心掛けしょう。