大麻は芸能人などの有名人が使用して逮捕されるのをテレビで見たりすると、イメージ的には「危険な物」と思っている人も多いようです。ですが、海外では医療大麻が注目されるなど、少しずつ見方も変わってきています。
その中でも麻に含まれている「CBD」という成分は日本でも認可されていて、海外では多くの病気や症状に効果があると発表されています。
今回はCBDの効果効能や副作用について、また同じ大麻由来成分のTHCとの違いやCBDに関して違法性は無いのかなど、この機会に覚えてください。
CBDとは?特徴や安全性について
基本「麻」と「大麻」は同じ意味です。麻にはカンナビノイドという有効成分が含まれていて、104種類あります。このカンナビノイドの主要成分の一つがCBD(Cannabidiol:カンナビジオール)です。
大麻の成分というイメージから精神作用(いわゆるハイ)があると思われるかもしれません。ですが、それは同じカンナビノイドの一種であるTHC(Tetrahydrocannabinol:テトラヒドロカンナビノール)のことです。
CBDにはTHCのような精神作用は引き起こしません。「CBDの安全性」についてはさまざま機関で認められています。
WHO(世界保健機関)
WHOはCBDに関して、「安全性に関するエビデンス、一般的に良好な許容性があり、報告されているいくつかの副作用は、患者が服用する処方薬との薬物相互作用による可能性がある」と報告し、CBDを危険薬物カテゴリーから外す検討が開始されています。
FDA(アメリカ食品医薬品局)
アメリカのFDAはWHOの報告を受け、アメリカでは2018年にCBDを含む治療薬を認可しています。
アメリカは国ではまだ大麻の取り扱いについては違法ですが、2018年12月20日にアメリカ連邦法で大麻草(カンナビス)はTHC含有量が0.3%以下のヘンプ(産業用の麻)が規制植物から外されることとなりました。
さらにアメリカ麻薬取締局はCBD製剤のEpidiolex(エピディオレックス)を一般的な睡眠薬より安全な物質として分類しています。
※麻の英語名
- 大麻草のことをcannabis(カンナビス)
- THCが少ない産業用の麻をhemp(ヘンプ)
WADA(世界アンチドーピング機構)
アスリートの薬物の摂取などで、たびたびテレビでも取り上げられている世界アンチドーピング機構の「WADA」では以前、CBDは摂取禁止の成分でした。
ですが2018年にWADAでは「CBDを禁止薬物検査リストから除外」したことで、アスリートからの需要が拡大しています。
日本での大麻やCBDの取り扱いは?規制の対象外の理由
カナダでは2018年に「嗜好用(娯楽用)大麻の解禁」がありましたが、医療大麻だけは解禁している国、そしてどちらも禁止している国とさまざまです。
日本では大麻取締法により、麻の花穂や葉、根の所持や加工は禁止になっていて、医療大麻に関しても禁止されています。そして栽培は許可性ですが、最近は許可が下りることはほとんどありません。
一方で麻の「茎」と「種」に関しては加工も使用も問題ありません。
実際に種に関しては「ヘンプシード」というスーパーフードとして人気がありますし、七味唐辛子の一番大きい黒い粒は「麻の種」です。

「大麻の関連食品なんて食べたことがない」と思っている人も実は口にしているわけです。そしてTHCに関しては精神作用を引き起こすとして取り扱い禁止の成分ですが、茎や種子から採れるCBDの摂取は違法ではありません。
CBD製品を購入する際の注意点
ここで注意したいのが、
- 茎や種子から抽出したCBDは合法
- 花穂や葉から抽出したCBDは違法
という点です。
現在CBD商品に関しては
- CBDオイル
- CBDウォーター
- CBD入りチョコ
などが日本でも販売されています。
。
正式に販売許可を得ている正規輸入代理店や正規輸入販売店のCBD製品であれば問題ありません。ですが海外から個人輸入したCBD製品は茎と種以外からCBDを抽出している場合が多いです。
その輸入したCBDオイルが製造した国では違法でなくても日本では違法になります。
最近は個人輸入も流行っているので、必ず販売許可を得ているお店から購入するようにしましょう。
カンナビノイドの一種であるCBDなどに期待される効果や効能
104種類あると言われているカンナビノイドの中でカンナビジオール(CBD)が最も多くの効果や効能があると期待されています。
一方で、テトラヒドロカンナビノール(THC)は精神作用があるため、日本では禁止になっていますが、世界的にはさまざまな効果が期待されている成分で、ガンの疼痛緩和など医療大麻として利用されている国もあります。
では日本国内で許可されているCBDにはどのような効果や効能があるのでしょうか?
まずはCBDやTHCなど主なカンナビノイドの薬理作用を紹介します。
カンナビノイドの薬理作用
CBD | THC | CBG | CBN | CBC | THCV | CBGA | CBCA | THCA | CBDA | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
疼痛緩和 | ● | ● | ● | ● | ||||||
食欲抑制 体重減少 | ● | |||||||||
殺菌・細菌 増殖抑制 | ● | ● | ● | |||||||
血糖値を下げる | ● | |||||||||
悪心おう吐を 減らす | ● | ● | ||||||||
発作とけいれんを 減らす | ● | ● | ||||||||
真菌感染症の治療 | ● | |||||||||
炎症を減らす | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||
睡眠補助 | ● | ● | ||||||||
動脈閉塞の リスクを減らす | ● | |||||||||
腫瘍/がん細胞の 増殖抑制 | ● | ● | ● | ● | ● | |||||
乾癬(かんせん) の治療 | ● | |||||||||
精神病管理 精神安定剤 | ● | |||||||||
抗けいれん | ● | ● | ● | ● | ||||||
不安をやわらげる | ● | |||||||||
食欲増進 | ● | |||||||||
骨の成長促進 | ● | ● | ● | ● | ||||||
免疫系の作用抑制 | ||||||||||
小腸収縮抑制 | ● | |||||||||
神経系変性の保護 | ● |
このようにカンナビノイドにはCBDだけでなく他の種類にも多くの効果が期待されています。
この中で
「科学的な有効性が人体で確認されている領域」は
- てんかん
- あがり症などの不安障害
- パーキンソン病
- 禁煙治療
- 統合失調症
「科学的な研究が進行中の領域」は
- うつ病
- 睡眠障害
- ガン(抗腫瘍効果)
- 認知症
- 依存症治療
- 関節リウマチ
- 炎症性腸疾患
- 多発性硬化症
- 神経因性疼痛
- 糖尿病
- 心臓病
- 皮膚疾患
- 不眠症
- 骨粗しょう症
- 自閉症スペクトラム
- 薬物依存治療
- 各種の痛み
まだまだ研究段階ではありますが、本当に多くの疾病に関して効果が期待されています。これらの病気や症状の中でも特に「てんかん」に関しては多くの事例があり、海外ではドキュメンタリーなどで紹介されています。
CBDのてんかんによる効果
てんかんは脳内の神経細胞の異常な電気的興奮にともない、けいれんや意識障害などが発作的に起こる慢性的な脳の疾患です。
医療大麻が注目されたのは2013年にアメリカのCNNの医療番組で、CBDオイルによって6歳の女の子の発作が1週間に300回から1回に激減したことが紹介されたことです。
それが「シャーロットのおくりもの=衝撃のてんかん治療法」です。
シャーロットちゃんはてんかんの中でも重度で難治性のドラべ症候群でした。けいれんや発作が20~30分以上続き(時には2~4時間つづくことも)、そして2年半以上重い発作が頻発したそうです。
処方箋も効かないどころか、処方箋で何度か心臓が止まったことも。もう治療法がなくお手上げ状態の時に、最後に試したのがCBD治療です。
そのころは週300回の発作が6か月以上続いていたのが、CBD治療を始めてから発作は1週間に一度だけと劇的に変わりました。そして9か月後には週の発作が1回か0回になりました。
CBDの抗けいれん作用は1970年代から知られていましたが、通常の麻にはTHCも含まれているため、中枢神経の副作用の懸念から誰も見向きもしませんでした。それが最近になってようやく徐々に認知されるようになってきています。
GW製薬のCBD製剤(Epidiolex:エピディオレックス)での臨床試験では、200名の患者のうち78%が発作の回数が減り、そのうち25%は発作が完全になくなっています。
日本でもドラべ症候群の患者は3,000人ほど、同じてんかんの難治性のレノックス・ガストー症候群は4,300人ほどいると言われていますが、大麻取締法で医療大麻も禁止されているため、最近までは目立った動きはありませんでした。ですが、2019年3月には
大麻の成分を含む難治性てんかんの治療薬が国内で初めて使える見通しとなった。医薬品としての使用や輸入は大麻取締法で禁じられているが、病院での臨床試験(治験)という位置づけで許可する。米食品医薬品局(FDA)はすでに承認している。
19日の参院沖縄・北方問題特別委員会で、秋野公造氏(公明)の質問に厚生労働省の担当者が答えた。
参照:朝日新聞デジタル
というニュースがとりあげられ
2019年4月には
聖マリアンナ医科大が、大麻の成分を含む難治性てんかんの治療薬の臨床試験(治験)の申請準備を始める。医薬品としての使用や輸入は禁じられているが、同大の明石勝也理事長らが10日、大口善徳厚生労働副大臣に治験に向けた協力を要請。大口副大臣は患者の対象をしぼり、薬の管理を徹底するなどを条件に、治験は可能と回答した。
このように、まだ治験の段階ではありますが、少しずつ日本でも医療大麻が見直されてきています。
海外での参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4707667/
では実際にてんかんの治療に関してCBDオイルがCBD製剤(エピディオレックス)と同じように効果が期待できるのかという点が気になるところですが、 CBDオイルでも、てんかんへの有効性が期待出来る可能性あると言われています。
参照:グリーンゾーンジャパン「日本で買えるCBDオイルはてんかんに効くのか?」
CBDの副作用と併用に注意をする薬物に関して
CBDには精神作用がないのがわかったとしても、実際に副作用は全くないのでしょうか?
副作用に関しては健康な人に30日間CBDを一日10~400mg投与した実験での慢性的なCBDの使用では、神経学的および精神学的な副作用も見られないことが明らかにされています。
ただし、軽い症状で頻度が高いものには
- 消化器症状(下痢、食欲低下)
- 倦怠感
- 傾眠
- 貧血
- 不眠
- 皮疹
- 体重減少
- 肝酵素上昇
- 脱力
などが挙げられます。
不眠とありますが、それよりも私がCBDウォーターを飲んだ時には、いつもよりぐっすり眠ってしまったことがあり、運転前に飲むのはおすすめできないと思いました。
車の運転を控えるようにと書かれている市販の薬がありますが、それと同じように考えたほうが良いです。使用開始後に上記の症状が出た場合は、使用を中止し、専門家に相談するようにしましょう。
CBDと併用に注意を要する薬物
- 抗凝固薬(ワルファリン)
- 抗血小板薬(シロスタゾール、クロピドグレル)
- 降圧剤(ジルチアゼム)
- 抗てんかん薬(クロバザム、バルプロ酸ナトリウム)
- 抗うつ薬(エスシタロプラムシュウ酸塩)
- その他(CYP2C19、CYP3A4などの代謝経路にかかわる薬剤)
これらの薬剤の服用時には相互作用に関して注意をしてください。
参照:https://www.uptodate.com/contents/cannabidiol-druginformation
まとめ
大麻由来成分のCBDは現在CBDオイルやCBDドリンクなどに含まれていますが、日本では違法の成分ではありません。ですが、日本では大麻草の花穂と葉は倒立で規制されていますが、茎や種子は規制対象外です。
そのため茎由来のCBD商品に関しては購入も使用も可能です。国内で流通している製品は税関審査を経ているため法的には問題はありません。
個人で海外から輸入する際は気を付けて注文してください。CBDは大麻草特有の精神作用は伴いません。さまざまな病状に効果があることが明らかにされつつあり日本ではサプリメント扱いですが、海外では医薬品として管理されています。
飲み合わせによっては他の薬物と相互作用を引き起こすこともあるので、CBDの使用にあたっては必ず主治医に相談してください。