マグロはお寿司のネタの中でも一番人気のあるネタですね。

そして「おいしい!」というだけでなく、栄養も豊富なので健康にも良いのですが、実はマグロの食べ過ぎは注意が必要です。

その原因はマグロなどの大きな魚に含まれる「メチル水銀」なのですが、特に妊婦さんは胎児に影響があると厚生労働省でも注意を促しています。

ただマグロによっても注意が必要な種類とそうでないものに分かれますし、マグロ以外にも注意が必要な魚がいます。

今回はメチル水銀が多い魚や摂取許容量の目安など詳しく紹介します。

メチル水銀の危険性と摂取許容量について

メチル水銀」とは水俣病原因物質です。

そして2016年には東北大チームの疫学調査により、マグロやメカジキなどメチル水銀を比較的多く含む魚介類を妊婦が食べ過ぎると、生まれた子の運動機能や知能の発達に悪影響が出るリスクが増すことがわかりました。

それまでもメチル水銀の悪影響についてはいろいろと言われていましたが、一般的な食用に問題のない低濃度の汚染でも胎児の発達に影響する可能性があることが明らかになるのは、日本人対象の調査では初めてでした。

妊婦のメチル水銀の摂取許容量は?

日本の食品安全委員会は2005年に妊婦が1週間に摂っても良いメチル水銀の量(許容摂取量)を、3.4ug(100万分の3.4g)から

「体重1kg当たり2.0ug(100万分の2グラム)」と設定しています。

これは国際専門会議(JECFA)において、発育途上の胎児を十分保護するため、暫定的耐容量(PTWI)3.3μg/kgから1.6μg/kgに変更されたのを受けてのものです。

つまり日本では2.0ugなのに対して、世界基準は1.6ugと低い基準となっています。

これは日本の魚が安全というよりも日本は魚を食べる習慣があるので高く設定してます。

厚生労働省ではこれに基づき、クロマグロの摂取は週80グラム未満とするなどの目安を示している。今回の調査では食生活も尋ねており、約2割がこれを超えていたと考えられるという。

東北大の調査によると2002年から、魚をよく食べていると考えられる東北地方沿岸の母子約800組を継続的に調査じたところ、約2割が基準を超えていたという結果が出ています。

となると知らないうちに基準よりも多く摂ってしまう場合が多いようです。

ではメチル水銀に気をつけなくてはいけない魚はどれくらいあるのでしょうか?

メチル水銀が多い魚と目安の摂取量

メチル水銀が多く含まれているのは大型魚で、その理由は食物連鎖の影響によるものと言われています。

つまりクジラやサメ、イルカ、マグロなどの大きな魚に多く含まれますが、クジラやサメ、イルカなどはあまり食べることは少ないので、それ以外の魚で注意が必要な魚を紹介します。

参照:これからママになるあなたへ。お魚について知ってほしいこと(厚生労働省)

①注意が必要な魚

  • ミナミマグロ(インドマグロ)
  • キダイ
  • マカジキ
  • ユメカサゴ

こちらは1週間に80gまでと制限されています。

80gはそれぞれ刺身1人前、切り身1切れ

②特に注意が必要な魚

  • クロマグロ(本マグロ)
  • メバチマグロ
  • キンメダイ

こちらは1週間に40gまでと制限されていますので、「①注意が必要な魚」の半分の量となります。

③特に注意が必要でない魚(安心して食べられる魚)

  • キハダ
  • キハダ
  • ビンナガ(びんちょうマグロ)
  • メジマグロ
  • ツナ缶
  • サケ
  • アジ
  • サバ
  • イワシ
  • サンマ
  • タイ
  • ブリ
  • カツオ

など

一応これらはメチル水銀に関して心配する必要がありません。

ですがエビ、サケ、タラはアメリカでは注意事項の対象になっています。

日本で対象となっていない理由は厚生労働省によると

国内において流通している魚介類の調査結果(約400種、約9,700検体)を基礎としました検査結果ではエビ、サケ、タラ等の水銀濃度は低く、特に注意を促す必要があるものではないと考えています。

厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて」問い6

日本は安全でアメリカは危険というのが、少し疑問に感じるところですが、海外に住んでいる方や旅行で海外にいる人はエビ、サケ、たらも注意しましょう。

お寿司の場合摂取許容量は何貫まで?

先ほどインドマグロなど注意が必要な魚は1週間に80gまでに制限し、それは刺身1人前、切り身一切れと紹介しました。

ただし、「刺身1切れやお寿司1貫ってどれくらい?」と疑問が出てくるのではないでしょうか?

お寿司の魚の大きさはお寿司屋さんによって多少違いはありますが、

刺身やお寿司の1切れ、または1貫あたりの重さは15g程度と言われています。

となると、お寿司に換算した場合、

  • 1週間80gまでと制限のある魚(インドマグロやマカジキなど)は5,6貫程度
  • 1週間40gまでと制限のある魚(本マグロやキンメダイなど)は2,3貫程度

とかなり少ない数で制限量に達してしまいます。

お寿司屋さんに行ってマグロが好きな人は本マグロを2貫なんてすぐに食べてしまいますよね。

しかも安心して食べられるお魚も全く水銀が入っていないのではないので、制限を超えて食べた場合はこれらの魚もあまり食べないほうが良いです。

許容摂取量を超えて食べてしまった場合は?

以外と制限量が少ないので、うっかり制限を超えて食べてしまうこともあると思います。

ですが、すぐに胎児に影響が出るというわけではありません。

1回または1週間当たりの魚介類の摂食が、体内の水銀の濃度を大きく変えるものではありませんが、1回または1週間の食事で、注意事項にある魚介類を食べ過ぎた場合、次回または次週の食事でその量を減らすなどの工夫をしましょう。

厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて」問い9

また「妊娠に気づくのが遅れて、その間に本マグロなどを制限超えて食べてしまったらどうなるの?」という心配もあると思います。

これに関しても

メチル水銀は胎盤を経由して胎児に取り込まれますが、胎盤の形成は一般的に妊娠4ヶ月であること、体内に取り込まれた水銀は代謝、排泄され、その体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月であることなどから、妊娠に気づいた段階から水銀の摂取量をコントロールすることで一定の効果が期待されると考えています。

厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて」問い21

となっているので安心してください。

また東北大チームの研究でも

比較的低濃度のメチル水銀でも妊婦が摂取した場合、胎児の発達に影響するリスクがあることが明らかになったが、影響の受けやすさには個人差があり、多く摂取した母親の子が必ずしも大きな影響を受けるとは限らない。今回の研究結果は、個人レベルではなく、集団として将来知的障害と判断される子の割合が増えることを意味する。

「マグロ過食に注意 妊婦から胎児へ影響(毎日新聞2016年11月28日)

とこのように必ずしも過剰摂取したからといって胎児に影響するとは限りません。

あまり過度な心配も良くありませんし、どうしても心配という人は髪の毛で水銀濃度を測定することはできます。

ただし厚生労働省では「妊婦であっても髪の水銀濃度等を測定することは必要ないと考えています」と述べているので、そこまで神経質になる必要はありません。

授乳中の場合や子どもへの影響について

その他に心配なことといえば授乳中の母親から胎児への影響やまだ脳が発達していない小さなお子さんへの影響ですね。

まず授乳中の母親から胎児への影響に関して厚生労働省では

食品健康影響評価では、母乳を介して乳児が摂取する水銀量は低いことが示されています。このため、授乳中の母親は今回の注意事項の見直しにおいても対象としていません。

厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて」問い3

と述べています。

また子どもも制限の対象とされていません。

ただし、日本では妊婦だけに勧告が出ていますが、欧米諸国の多くは乳幼児子どもにもメチル水銀の摂食の基準値を設定している国もあります。

そのため水銀が多い大きな魚はあまり食べさせすぎるのも良くありませんので、小さな魚を食べさせるようにしましょう。

まとめ

マグロなど大きな魚には水俣病の原因となってメチル水銀が多く含まれていて、妊婦には国から摂取制限の勧告がなされています。

①注意が必要な魚

  • ミナミマグロ(インドマグロ)
  • キダイ
  • マカジキ
  • ユメカサゴ

こちらは1週間に80gまでと制限されています。

80gはそれぞれ刺身1人前、切り身1切れ、お寿司であれば5,6貫程度

②特に注意が必要な魚

  • クロマグロ(本マグロ)
  • メバチマグロ
  • キンメダイ

こちらは1週間に40gまで、お寿司であれば2,3貫程度。

この制限量では知らないうちに超えてしまいそうですが、マグロの中でもびんちょうマグロメジマグロであれば、制限がありません。

またメチル水銀ばかり取り上げると「マグロは身体に悪い!」というイメージがついてしまいますが、

  • タンパク質
  • ビタミンA、D
  • オメガ脂肪酸のEPAやDHA
  • アミノ酸の一種のタウリン

などが豊富に含まれている健康に良い食べ物です。

特にDHAは「頭が良くなる成分」と一時期注目されました。

昔大ヒットした「おさなか天国」でも「さかなを食べると頭が良くなる~」という歌詞がありましたが、あればDHAのことですし、魚の中でもマグロはDHAの含有量がトップクラスです。

お肉も適量であれば健康に良いですが、食べ過ぎは脂質の摂りすぎて健康に悪いです。

また野菜は健康に悪いところがないと思っているかもしれませんが、亜硝酸塩の危険性なども指摘されているので、完全に安全な食べ物なんて本当に少ないです。

人間のために生まれてきたものはないので、人にとって良い成分も含まれていますし、反対に過剰摂取すると悪影響を及ぼす成分もあります。

やはりどんなに好きな食べ物で健康に良いとしても、そればかり食べずにバランス良く食べるようにしましょう。

特に妊婦さんは食べ物に気を付けている中でマグロなどに制限まであると献立が大変ですが数か月の辛抱です。

なんとか乗り切って産後にお寿司など好きな魚をいっぱい食べてくださいね。