ダイエットや便秘解消に改善効果があるとされる寒天ですが、最近の研究で、美肌やがん予防への効果も期待できると報告されているのをご存知ですか?
そのため、近年ではスーパー食材として「寒天」が注目されています。この機会にぜひ「寒天」のもつ健康パワーを毎日の生活に取り入れてみてはいかがでしょう。
また、寒天と見た目が似ているゼラチンやところてんは栄養価など違いがあるのかについても紹介します。
「寒天」とは?原料や「ところてん」との違いについて
寒天の原料はテングサです。またはオゴノリなどの海藻で作られる場合もあります。
これを見つけた太郎左衛門のひらめきによって寒天の製法が編み出され、和菓子の原料として年々改良され発展したといわれています。
原料が同じ「寒天」と「ところてん」の違いは?
寒天もところてんも原料は同じです。では名前だけが違うのかというと、そうではありません。まず原料(海藻)からところてんが作られ、そこから寒天になります。つまりところてんを凍らせて乾燥させたものが寒天です。
ただ、ところてんは独特のニオイ(磯のニオイ)があるので、苦手という人もいます。ですが、寒天はほとんどニオイがしないので、万人受けするため、料理やお菓子にも使われます。
栄養価に関してはネットを見ると間違った情報が書かれています。良く見かけるのは「ところてんには海藻のミネラルが豊富に含まれているものの、寒天にはあまり含まれていません。」という内容です。
「日本食品成分表2019」を見ると原料のテングサから作られている「ところてん」と「寒天」のミネラルの量にほとんど差はありません。
ここでの「寒天」は棒寒天(別名:角寒天)をゼリー状にしたものです。
100gあたりのカロリーとミネラル含有量
ミネラル | 寒天 | ところてん |
---|---|---|
カロリー | 3kcal | 2kcal |
カリウム | 1㎎ | 2㎎ |
カルシウム | 10㎎ | 4㎎ |
マグネシウム | 2㎎ | 4㎎ |
リン | 2㎎ | 4㎎ |
鉄 | 0.2㎎ | 0.1㎎ |
ヨウ素 | 21㎍ | 240㎍ |
※日本食品成分表2019参照
これを見るとほとんど差がないのがわかります。
となるとゼリー状になっている寒天とところてんの違いは独特のニオイがあるかどうかということになります。ですが、寒天がゼリー状になる前の棒寒天などは栄養価が高いです。
寒天の種類と製造方法
天然寒天 | 冬の低温を活かして凍結・乾燥により作られる寒天 |
工業寒天 | 機械装置により強制的に圧搾機による脱水をする工程を経て作られる寒天 |
- 天然寒天・・・角寒天(棒寒天)・細寒天(糸寒天)
- 工業寒天・・・粉寒天(粉末寒天)
棒寒天や細寒天の特徴
棒寒天や細寒天は昔ながらの製法で作っているところが多く、また、国産のテングサを使って製造しているところが多いですが、使い道が限られているという欠点があります。
一方、粉寒天は水に溶いて利用できるので、お菓子や料理に幅広く使用されています。ただし、国産の天草を100%したものはほとんどなく、外国産の天草やオゴノリ(ところてんには使用しない海藻)などの海藻をブレンドして作っています。
このように粉寒天は質が他の寒天と比べて少し落ちるのですが、栄養価はどうでしょうか?
棒寒天と粉寒天とのカロリーと栄養価の違い(100g)
※棒寒天(角寒天)、細寒天(糸寒天)の栄養価はほぼ同じです。
ミネラル | 棒寒天 | 粉寒天 |
---|---|---|
カロリー | 154kcal | 165kcal |
食物繊維 | 74.1㎎ | 81.7㎎ |
カリウム | 52㎎ | 30㎎ |
カルシウム | 660㎎ | 120㎎ |
マグネシウム | 100㎎ | 39㎎ |
リン | 34㎎ | 39㎎ |
鉄 | 4.5㎎ | 7.3㎎ |
※日本食品成分表2019参照
違いはカルシウムとマグネシウムが棒寒天が多いですが、それ以外は差がほとんどありません。
棒寒天から作られたゼリー状の寒天はカロリー3kcalで、食物繊維が1.5gなので、それと比べると棒寒天や粉寒天はカロリーが高くて食物繊維やミネラルが豊富と言えるでしょう。
- カロリーを抑えたい:棒寒天をゼリー状にした寒天
- 食物繊維やミネラルをとりたい:棒寒天や粉寒天
棒寒天は見るとわかりますが、問題はお菓子に利用している寒天がゼリー状の寒天か粉寒天かということです。
「食物繊維を摂りたいから寒天を食べよう」と思い、コンビニなどで安い寒天入りのゼリーなどを購入してもカロリーは引くいかもしれませんが、食物繊維やミネラルは含まれていません。
高級な和菓子のお店で使用する寒天は粉寒天を使用しているところが多いと思います。
ちなみに「とらやの羊羹(ようかん)」は粉寒天ではなく、「天然の糸寒天」を使用しています。糸寒天はお菓子に使いにくいと思いますが、さすが「とらや」ですね。つまり「とらやの羊羹」には食物繊維やミネラルがたっぷり含まれているということです。
寒天とゼラチンとの違いは?
では次にこちらも見た目が似ている寒天とゼラチンですが、どのような違いがあるのでしょうか?
- 寒天は「植物性の凝固剤」
- ゼラチンは豚や牛の骨や皮に含まれるコラーゲンを精製して作った、たんぱく質を原料とする「動物性の凝固剤」
という違いがあります。
寒天が常温で固まるのに対して、ゼラチンは低温(10℃以下)で冷やさなければ固まりません
また、寒天は融点が高いので、一度固まってしまえば、多少の熱や口に含んだだけでは溶けないのに対し、ゼラチンは約30℃を超えると溶けるので、口に含んだだけでスーッと溶けます。
寒天とゼラチンの成分やカロリーの違い
寒天は先ほど8割近くが食物繊維と紹介しましたが、ゼラチンは約9割がコラーゲンから作られるタンパク質です。コラーゲンには美肌効果や関節に良いなどと言われていて、以前は否定されていましたが、最近また見直されています。
またゼラチンにもミネラルが含まれていますが、寒天と比べると少ないです。
カロリーに関しては100gあたり
- 寒天:154kcal
- ゼラチン:344kcal
と寒天がゼラチンの半分以下ですが、それぞれ食材には数gしか使用しないので、それほど気にする必要はありません。むしろお菓子に利用している場合は、寒天やゼラチン以外の原料(砂糖)がどれくらい使用しているのかを気にしましょう。
寒天の注目の栄養成分と効果や効能!
※ここでの寒天はゼリー状のではなく、棒寒天や粉寒天のことです。
寒天のおよそ75~80%は食物繊維です。棒寒天(角寒天)は100g中74.1gと、食物繊維の含有量は全食品中の断トツでトップです。
ただし、実際食材に使用する寒天の量は2g程度で、食物繊維は1.5gほどの量になります。この少量の食物繊維でも便秘解消に高い効果があることがわかっています。
札幌医科大学が、便秘を自覚する女子大生29人に寒天を毎日2g摂取させたところ、
75%の人で便秘が解消されたと報告しています
(『臨床と研究』75巻98~102ページ、1998)。
少量の寒天でも便秘が解消されるのは、食物繊維の強い保水力によるものです。食物繊維は体内に入ると250倍もの水分を吸って膨張します。
しかもその水分は胃や小腸では吸収されないまま大腸に到達し、便を増やすとともにやわらかくするために便通が改善します。さらに、体内食物繊維が250倍にもふくらむことで満腹感ももたらすので、食べすぎを防ぎダイエットにも最適です。
そして食物繊維の効果はこれだけではありません。
腸内フローラの改善
寒天に含まれる水溶性食物繊維の仲間である「アガロオリゴ糖」には、コラーゲン分解酵素の活性を抑えてシワを改善する働きがあると言われています。
アガロオリゴ糖は、私たちの身体にすでに備わっている解毒酵素の働きを活性化させ、有害物質の排出をサポートし、腸内フローラを良い状態に保ってくれるのです。
腸の中には約1000兆個もの腸内細菌がいるとされ、その姿が花畑のように見えるので腸内フローラと呼ばれています。この腸内フローラをうまくコントロールし良い状態にすることで、
- 免疫力アップ
- ダイエット効果
- 美肌効果
などが期待できるのではないかといわれています。
またアガロオリゴ糖は、コレステロールを下げる効果も報告されています。
若返り菌「エクオール産生菌」を増やす
肌をキレイにし、がん予防に期待できるとされるエクオール産生菌は、若返り菌とも呼ばれています。このエクオール産生菌は、大豆にふくまれるイソフラボンを分解してエクオールという物質を作り出します。
エクオールは女性ホルモンに似た働きをする物質で体の中で産生されることで
- 肌の状態を良くする効果
- 更年期障害の緩和
- 骨粗しょう症予防
- がん予防に役立つ
と近年注目されるようになりました。実際、閉経後の女性約90人にエクオールを摂取した結果、目尻のシワが改善されたというデータもあります。
エクオールおすすめサプリ⇒「大塚製薬エクエル」
この若返り菌である「エクオール産生菌」を増やすといわれているのが、「寒天」です。
テレビ番組「主治医が見つかる診療所」でも、たった5日間寒天を食べる生活を行っただけで、沢田亜矢子さんの若返り菌は急激に倍増する結果となりました。
1.6%→3.35%と2倍以上になりましたが、標準は2-3%程度なので、5日でこれだけ伸びるのはスゴイですね。
食物繊維はその他にも
- 高血圧の改善
- 血糖値上昇の抑制
なども確認されています。現代人は食物繊維が不足していると言われています。
食物繊維が不足することで腸内環境が悪化すると便秘になるだけでなく、老廃物が体外に出ないため病気にかかりやすくなったり、肌も荒れやすくなります。
ぜひ少量で多くの効果や効能が期待できる寒天を食べるようにしましょう。
寒天の正しい選び方とおすすめ品
国産の天然のテングサから作られた良質な寒天を購入するならば、棒寒天(角寒天)や糸寒天(細寒天)を選びましょう。ただし、棒寒天は料理に使いにくいので、糸のように細い糸寒天(細寒天)がおすすめです。
サラダの材料にしてもよいですし、鍋料理やスープ、みそ汁などに入れるだけで食べられます。
お菓子などに利用するならば、粉寒天です。国産の天然のテングサのみを使用した粉寒天はほとんどありませんが、お菓子以外にもさまざまな料理に使用できるのがおすすめです。
ここでは良質の糸寒天と粉寒天をおすすめします。
糸寒天のおすすめ品
「伊豆河童伊豆産100% 糸寒天 無添加 無漂白 6cm カット」
最高級のテングサ(天草)と言われている伊豆産を使用した糸寒天です。
しかも伊豆産天草100%で、無漂白・無着色なので、海藻由来の自然の色です。もちろん無添加です。
伊豆河童 伊豆産100% 糸寒天 100g 無添加 無漂白 6cm カット
粉寒天のおすすめ品
「国産粉寒天200g(日本プレミアム粉寒天)」
「伊豆産」はもちろんんこと「国産テングサ100%」という粉寒天はほぼ販売されていないのですが、一つありました。しかも「伊豆天草(テングサ)100%」という超良質な粉寒天が。
もちろん他の粉寒天と違って原料にこだわっているので高価です。安ければ良いという場合は、外国産やテングサだけでなく、オゴノリを使用したものを選んでください。
まとめ
- 寒天の原料は海藻でところてんから作られる
- ところてんは味にクセがあるが寒天はないのでさまざまな食材に利用される
- 寒天のほとんどは食物繊維で腸内環境の改善が期待されている
- 棒寒天などから作られるゼリー状の寒天はカロリーが低くて栄養価も低い
- ゼラチンは豚や牛の骨や皮に含まれるコラーゲンから作られる
- ゼラチンのほとんどがタンパク質
最近は寒天を使用した「ゼロカロリースイーツ」が流行っていますが、あの寒天(ゼリー状の寒天)やところてんには食物繊維やミネラルはほとんど含まれていませんので効果は期待できません。
現代人が特に不足していると言われている食物繊維やミネラルを摂るならば、糸寒天や棒寒天、粉寒天を食べるようにしましょう。